(第16回)ママの心配事⑦~赤ちゃんのひきつけ~
“今日のすくすく赤ちゃん” の紹介は、コラムの最後に登場です♥
これまで、このコラムでは、ママの心配事として、赤ちゃんの様々な病気について考えてきました。
赤ちゃんは様々な病気をします。咳、鼻水、発熱等、大人でもよくある症状ならママも慌てることなく対応は出来ますが、突然、赤ちゃんの体が硬直し始めた、震え出した、口から泡をふいた、顔が青くなってきた・・・このような“ひきつけ”の症状を初めて見たママは大変びっくりされることでしょう。
赤ちゃんの“ひきつけ”はきちんと対処法を知っておけば、慌てる事はありません。
そこで、今回は、赤ちゃんの“ひきつけ”について考えていきたいと思います。
はじめに、“ひきつけ”という言葉について
“ひきつけ”という言葉は一般的に、“こどもの痙攣(けいれん)”のことを指して使われています。
“痙攣” とは?
様々な原因により、自分の意思に関係なく筋肉が激しく収縮する状態をいいます。全身性の痙攣と体の一部に発生する痙攣があり、筋肉収縮が長時間続くパターンと収縮と弛緩を短時間に繰り返すパターンがあります。
“痙攣” や “ひきつけ” は症状を表すものであり、病名ではありません。
主なひきつけの種類(ひきつけを伴う疾患)
ひきつけを伴う疾患は様々あり、代表的な疾患はこのようなものがあります。
1.泣き入りひきつけ(憤怒けいれん)
2.熱性けいれん
3.てんかん
4.脳炎
5.髄膜炎
それぞれの特徴
1.泣き入りひきつけ(憤怒けいれん)
赤ちゃんがギャン泣きし、激しい刺激や興奮により脳の呼吸をつかさどる部分の働きが一時的に低下することで起こる痙攣です。
一時的に呼吸が止まり意識を失って顔色が悪くなり(青紫色又は蒼白)、痙攣を起こします。全身がぐったりとした様子がみられる場合もあります。
生後6カ月から2、3歳のお子様に多くみられます。
2.熱性けいれん
38℃以上の発熱によって起こる痙攣です。熱が高くなると起こりやすくなります。
白目を向いたり、口から泡をふいたりし、痙攣を起こします。
通常、5分以内に痙攣はおさまります。
生後6カ月頃から6歳くらいまでのお子様に多くみられます。
3.てんかん
発熱のない状態で、脳の神経細胞がなんらかの刺激で興奮することで起こります。
以下のような症状(発作)がみられます。
全身の筋肉が硬直し、手足を大きく震わせる(左右対称の痙攣)
何かをしている時に突然意識がなくなる。
突然動作が止まり、ぼーっとする。
口をモグモグさせる、うなずくといった無意味な行動を繰り返す・・・等。
4.髄膜炎
インフルエンザ菌、肺炎球菌等のウィルス、細菌、真菌が脳や脊髄を覆っている保護膜である髄膜に感染することで起こります。
症状としては、発熱、嘔吐、皮膚の湿疹、痙攣、頭痛がみられます。
又、眼が一方(内側、外側)を向いたり、顔の表情が歪んだりすることもあります。
5.脳炎
ウィルスが直接、脳に感染することで起こります。
症状としては、発熱、嘔吐、意識障害、痙攣、頭痛、手足の麻痺がみられます。
脳炎は髄膜炎よりも症状が重い疾患です。
ここで、注意 !!
泣き入りひきつけや熱性けいれんは成長とともに起こらなくなっていきますが、てんかん、髄膜炎、脳炎は病院での治療が必要な疾患であり、治療が遅れると後遺症が残る場合があります。髄膜炎、脳炎では、重篤な場合は命に関わることもあります。
赤ちゃんにひきつけが多い理由
赤ちゃんは大人に比べて痙攣がおきやすいといわれています。
では、それはなぜなのでしょうか?
西洋医学では、赤ちゃんは脳が未発達なため、様々な刺激により、ひきつけが引き起こされやすいとされています。
東洋医学では、痙攣は五臓の中の“脾”、“肝”、“腎”のそれぞれのバランスが崩れることにより起こると考えられています。
五臓には互いに相手を制御する働きがあります。“脾”は“肝”を制御する働きがあるのですが、“脾”が弱くなることで、“肝”が強くなりすぎ、バランスが崩れます。
また、痙攣は“熱”により腎、肝の陰(体を潤す陰液)が不足することで引き起こされるとも考えられています。
赤ちゃんの体質は、成長エネルギーである“陽気”が強い状態です。
陽が強いということは、陰が不足しやすい(熱が生じやすい)ということでもあります。
また、赤ちゃんは脾、胃の機能が未熟なため、内的要因、外的要因の影響を受けやすくなっています。
このことから、赤ちゃんは大人に比べて、痙攣が起きやすいと考えられています。
ひきつけが起きた時の対処法
ポイント1 横向きに寝かせる
衣服を緩めて、平らな場所に寝かせましょう。
嘔吐があった場合、吐しゃ物が気道を塞がないように横向きに寝かせましょう(顔だけを横に向けるだけでもかまいません)
ヘアピン、ベルト等をしている場合は外しましょう。
ポイント2 ひきつけの状態を落ち着いてチェックする
ひきつけが起こっても、病院に行く時にはひきつけがおさまっている場合がほとんどです。
医師にひきつけが起こった時の状態をきちんと伝えることは、診断のために必要なことです。
(1)体温・・・熱はあるのか、ないのか
(2)時間・・・5分以上続いたのか
(3)意識の有無・・・意識障害はあるのか、ないのか
(4)ひきつけに左右差はあるのか、ないのか
(5)全身性のひきつけか、身体の一部だけのひきつけか
ひきつけが起きた時にしてはいけないこと
NG1 身体を揺らす、抱っこする、大声で呼ぶ
ひきつけを悪化させる可能性があります。
NG2 ひきつけを起こしている赤ちゃんの口の中に手やタオルを入れる
昔は、“舌を噛まないように”ひきつけを起こした赤ちゃんの口の中にママやパパがとっさに手を入れたという話をよく聞きましたが、ひきつけで舌を噛むことはほぼありません。むしろ、手やタオル等で気道を塞いでしまうことになりますので、やめましょう。
このような場合は、救急車を呼びましょう
1.5分以上、ひきつけが続く
2.左右差のあるひきつけ(片方の手足だけにひきつけがみられる等)
3、眼が一方に寄っている
4、ひきつけ後、意識がはっきりしない
5、1日のうち、何度もひきつけを繰り返す
赤ちゃんのひきつけの多くが、“泣き入りひきつけ”や“熱性けいれん”といわれていますが、赤ちゃんのひきつけが起きたら(特に、初めてのときは)、一度は病院へ行くことをおすすめします。
てんかん、髄膜炎、脳炎のように治療が必要な重大な疾患の可能性が隠れているかもしれません。
赤ちゃんのお薬「ひやきおーがん」について
これまで、この育児コラムでは、赤ちゃんのいろいろな症状に対する「ひやきおーがん」の働きをお知らせしてきました。
「ひやきおーがん」は夜泣きのお薬というイメージをお持ちのママが多いと思いますが、効能・効果は「小児の神経質、夜なき、かんむし、ひきつけ、かぜひき、かぜの熱、ねびえ(寝冷え)、下痢、消化不良、乳はき(吐乳)、食欲不振、胃腸虚弱」と様々です。
ここで、注意 !!
「ひやきおーがん」の効能・効果に「ひきつけ」とありますが、赤ちゃんがひきつけを起こした時に、服用させてもひきつけは止まりません。
「ひやきおーがん」は東洋医学の考えに基づき、赤ちゃんの心身のバランスを整えることで、ひきつけを起こしにくい体質へ改善するお手伝いをします。
ひきつけを起こしている赤ちゃんを目の前にすれば、ママもパパも驚きと心配で気が動転してしまうのは当然ですが、ここはしっかりと“冷静に”、“落ち着いて”対応をしてあげてください。
尚、ひきつけ(を伴う疾患)の中には、インフルエンザや日本脳炎のようにワクチンを接種することで、予防出来るものもあります。
“泣き入りひきつけ”は赤ちゃんをギャン泣きさせないようにすれば、ある程度は抑えられます。
ただし、“ギャン泣きさせない”ということは、日々の生活の中でそう簡単には出来ません。
赤ちゃんの“ギャン泣き”は、それでなくても育児ママの悩みの1つでもあります。
そこで、次回は、赤ちゃんのギャン泣きから、“泣き入りひきつけ”について、もう少し深く考えていきたいと思います。
…今回も、最後までお付き合い頂き誠に有難うございました!
【“今日のすくすく赤ちゃん” のご紹介です】
愛知県の諒哉(りょうや)くん
(2014年9月生まれ、身長82cm、体重12kg)
~お母さんから諒哉くんへのメッセージ~
2歳になってからどんどんしゃべる言葉が増えて、毎日笑わせてもらってます。これからも元気に育ってね。
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筆者プロフィール:樋屋製薬株式会社 薬剤師/大阪家庭薬協会 品質部会副部会長