(第25回)ママの心配事⑯~アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎)~
“今日のすくすく赤ちゃん” の紹介は、コラムの最後に登場です♥
前回のコラムでは、ママの心配事として、お子さんのアレルギー疾患の1つである花粉症について考えてきました。
アレルギー疾患は様々です。
特に、近年は子どものアレルギー疾患が多くなってきています。
食物アレルギー、アレルギー性鼻炎、花粉症、アトピー性皮膚炎等がありますが、その中で誤解されやすいのが、食物アレルギー=アトピー性皮膚炎です。
食物アレルギーがあるからといって必ずアトピー性皮膚炎になるとは限りません。
そこで、今回は、“アトピー性皮膚炎”ついて考えていきたいと思います。
アトピー性皮膚炎とは
日本皮膚科学会の定義では「アトピー性皮膚炎は、増悪(ぞうあく:悪くなる)・寛解(かんかい:良くなる)を繰り返す、そう痒(かゆみ)のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ。」とされています。
アトピー素因については、「1)家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎)のうちのいずれ、あるいは複数の疾患、または2)IgE抗体を産生し易い要因」とされています。
IgE抗体については、こちらをクリックしてください↓↓↓
これらをまとめると、アトピー性皮膚炎は「アレルギー体質の人に起こる痒みを伴う慢性の皮膚疾患」ということになります。
アトピー性皮膚炎の症状
主な症状は“かゆみ”と“湿疹”です。
日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版」によるアトピー性皮膚炎の診断基準は
○かゆみがある
○左右対称に湿疹ができている
○乳幼児では2カ月以上、その他では6カ月以上湿疹が続いている
アトピー性皮膚炎の湿疹の特徴
赤みのある湿疹、ブツブツと盛り上がる湿疹(丘疹)、ジュクジュクと液体が出る湿疹、ゴツゴツとしたしこりのある湿疹がよくみられます。
掻くことにより皮膚が厚く硬くゴワゴワした状態になり、かさぶたができたりします。
湿疹ができやすい部位については、個人差はありますが、顔(目、口、耳のまわり)、首、わき、手足の関節の内側等に多くみられます。
ここで、ポイント!!
年齢により症状は変化します。
乳児期は頭や顔に湿疹が多くみられます。幼児期~小児期にかけて、からだや下肢、関節部分にみられるようになり、皮膚の乾燥も目立つようになります。青年期~成人期になると皮膚の乾燥やゴワゴワが更に目立つようになります。特に上半身に多くあらわれます。
ここで、注意!!
乳児期のアトピー性皮膚炎はその症状が似ていることから、“乳児脂漏性湿疹”と区別が難しいといわれています。
乳児脂漏性湿疹とは
過剰な皮脂分泌により起こる乳児湿疹の1つです。
赤ちゃんは新陳代謝が盛んで皮脂分泌が活発な上、毛穴が未発達なので皮脂が毛穴に詰まりやすくなっているために起こります。
症状は顔や頭に黄色いかさぶたのような湿疹やフケのようなものがあらわれます。かゆみはなく、炎症が進むとジュクジュクした紅斑や丘疹がみられることがあります。
この赤ちゃんの過剰な皮脂分泌は生後4カ月頃にはおさまってくるといわれています。
乳児脂漏性湿疹の対処法
対処 患部を清潔にする
石鹸で汚れをよく落として皮膚を清潔にしてあげましょう。
洗浄後はタオルで優しく水分を拭き取り、患部を乾かしてあげてください。
対処NG! ゴシゴシと力を入れて洗う
無理にかさぶたを剥がしてしまうと、そこから雑菌が入ってしまう可能性があります。
湿疹が膿んでくるようであれば、病院での診察をおすすめします。
症状が良くなったり、悪くなったりが2カ月以上続くようなら、アトピー性皮膚炎の可能性がありますので、赤ちゃんの様子をよくみてあげてください。
アトピー性皮膚炎の原因
原因1 体質
【アトピー素因】
アレルギーを起こしやすい体質です。ただし、アトピー素因があってもアトピー性皮膚炎にならない人もいます。
【乾燥肌(ドライスキン)】
健康な皮膚では皮膚の角質層に保湿成分や油分をたっぷり持っているため皮膚のバリアができ、余分な水分の蒸発や、外からのさまざまな物質が侵入するのを防いでいます(皮膚のバリア機能)
乾燥肌ではこの皮膚のバリア機能が低下しているため、ダニ等のアレルゲンや化学的な刺激物質が侵入しやすくなり、また汗などの刺激にも弱くなります。
原因2 環境
アレルゲンとなる食物、ダニ、カビ等や汗、乾燥、衣類による刺激、ストレス、寝不足、過労等
アトピー性皮膚炎はこれらの原因が1つではなく、複数重なることで症状が起こると考えられています。
ここで、ポイント!!
乳幼児の場合、成長過程の中で消化機能が未熟なため、アレルゲンであるタンパク質を消化(小さくする)ことができず、(大きいまま)体内に取りこまれるためにIgE抗体がつくられやすくなり、アレルギー反応が起きやすくなっていると考えられています。
アトピー性皮膚炎の対処法
お子さんがアトピー性皮膚炎を発症したら、自分勝手な判断はせず、医師の指示に従って治療を行ってください。
それと並行して、アトピー性皮膚炎の症状が悪化しないように、日常の生活でのケアも心掛けてください。
〇患部を掻き壊さないように、普段から爪を短くしておく。
〇体に直接触れる肌着等は刺激の少ない素材のものにする。
〇ダニや埃等のアレルゲンを除去するために、室内、寝具を清潔に保つ。
〇乾燥しすぎないように、室内は適度な室温、湿度にする。
ここで、注意!!
これからの季節は“汗かき”、“虫刺され”に気をつけましょう。
汗はさまざまな刺激物質を含み、汗がたまる部分はかゆみが起きやすくなります。また、虫刺されによるかゆみはアトピー性皮膚炎のかゆみまで引き起こすことがあります。
東洋医学の視点でみるアトピー性皮膚炎
東洋医学では、“アトピー性皮膚炎”という病名はなく、子どもに多くみられる病気として、“四腕風(しわんふう)”と表現されています。
四腕風は「肘、膝などに対照的に発生し、患部の皮膚が粗雑で肥厚し、掻痒し掻き破ると流水するがあまり多くなく、時に軽く時に重く長引いて治りにくい」とされています。
本質は体質素因に関係すると考えられています。
東洋医学の視点での対処法
体質を改善し、同時に表面の治療(軟膏を塗布等)も合わせて行うことが多いです。
体質改善には、五臓の“脾”と“肺”の機能を強めることを心掛けましょう。
対処法1 消化吸収の良い食べ物を摂る
脾への負担を少なくするために、甘いもの、油ものを控え、消化吸収の良い食べ物を中心によく噛んで食べましょう。
対処法2 冷たいものを控える
アイスクリームやジュース等の冷たいもの、果物のような水分の多いものは脾の機能を弱めますので、控えましょう。
対処法3 朝食をきちんと摂る
肺の気を高めるために、朝食はしっかりと摂りましょう。
そして、朝食をきちんと摂るために、規則正しい生活を心掛けましょう。
五臓のバランスが崩れると身体に様々な影響を与えます。
赤ちゃん、お子さんの体は成長過程にあり、まだまだ未熟です。ちょっとしたことで心身のバランスが崩れます。体質改善はすぐに効果はあらわれにくいものですが、今後の健やかな成長のために、体質改善に取り組むことも育児ママの選択肢の1つではないかと考えます。
赤ちゃんのお薬「ひやきおーがん」について
これまで、この育児コラムでは、赤ちゃんのいろいろな症状に対する「ひやきおーがん」の働きをお知らせしてきました。
「ひやきおーがん」は夜泣きのお薬というイメージをお持ちのママが多いと思いますが、効能・効果は「小児の神経質、夜なき、かんむし、ひきつけ、かぜひき、かぜの熱、ねびえ(寝冷え)、下痢、消化不良、乳はき(吐乳)、食欲不振、胃腸虚弱」と様々です。
「ひやきおーがん」は東洋医学の考えに基づき、心身(五疳)のバランスを整えることで、赤ちゃんの体質を改善するお手伝いをします。
赤ちゃん、お子さんの病気はいろいろあります。
特に、大人と違って言葉で症状をうまく伝えられない赤ちゃんやお子さんが病気になるとママは大変心配になります。
次回は、赤ちゃん、お子さんの病気についての総まとめをしたいと思います。
…今回も、最後までお付き合い頂き誠に有難うございました!
【 “今日のすくすく赤ちゃん” のご紹介です】
アメリカ合衆国マサチューセッツ州 冬真くん
(2017年1月生まれ、身長55cm、体重4.8kg)
今回は、海外からの赤ちゃんでした(^^)
《お知らせ》
現在、このコラムに登場してくれる「すくすく赤ちゃん」を募集中です!
詳細はこちらをクリックしてください↓↓↓
たくさんの赤ちゃんの応募をお待ちしております!
筆者プロフィール:樋屋製薬株式会社 薬剤師/大阪家庭薬協会 品質部会副部会長