(第40回)夏に要注意!!~お子さんの熱中症①基礎編~
“今日のすくすく赤ちゃん” の紹介は、コラムの最後に登場です♥
これまでこのコラムでは、お子さんの夏に多い病気として、手足口病、ヘルパンギーナ、プール熱(咽頭結膜熱)について考えてきました。
それぞれ、この時期に流行のピークを迎えますが、注意しなければならないのはこれだけではありません。
新聞、テレビニュース、街中のポスター等、いろいろな場面で頻繁に目にする「熱中症」。
熱中症は最悪の場合は死に至ります。
お子さんからお年寄りまで、毎年、熱中症で命を落とされる方は少なくありません。
そこで、今回は、「熱中症」について考えていきます。
熱中症とは
高温多湿な環境下で、身体が適応できないことで生じるさまざまな症状の総称です。
熱中症は体温調節機能の乱れにより起こります。
【体温調節機能とは】
普段から人間の身体の中では、絶えず様々な熱が作られています(産熱)
運動すれば、筋肉で大量の熱が作られますが、じっとしているだけでも、心臓や脳は動いているため、熱は作られています。
食事をした後、体温が高くなったと感じることはありませんか?これも食事を消化のするために胃腸が活発に働くことで熱が作られているからです。
このように人間の身体は多くの熱を作り出しますが、体温が高くなりすぎてしまった場合は自律神経の働きにより末梢神経を拡張し、体の中心より温度の低い皮膚に多くの血液を流れ込ませることで血液を冷やし体内に循環させることで体外へ熱を放出します(放熱)。
また、汗腺の発汗作用が促されることで、汗が出ます。その汗が蒸発する際に皮膚から気化熱を奪うことで、体外へ熱を放出します。
~お子様~ポイント!!
子どもは大人に比べると、体温調節機能が未発達です。体重に比べて体の体表面積が大きいため、暑い環境下では熱を取り込みやすい傾向があります。
ここで、注意!!
気温だけでなく、湿度にも注意が必要です。
湿度が高いと汗が蒸発しにくくなるため、体内に熱がこもりやすくなります。
炎天下を避け、室内にいるからといっても油断は大敵です。
湿度の高い室内では、熱中症になる危険はあります。
熱中症の要因
要因1 環境
気温が高い、湿度が高い、日差しが強い、通気が悪い(風が弱い)
要因2 身体
(疲れ、寝不足)体調が悪い、乳幼児、高齢者、肥満、(糖尿病、高血圧等)持病がある
要因3 行動
炎天下での激しい運動、長時間労働、水分補給ができない
これらの要因が重なることで熱中症が起こりやすくなります。
~お子様~注意!!
子どもは大人に比べて顔の位置が低いため、地面からの照り返しの影響を受けやすくなっています。大人と子どもの高さでは2~3℃異なる場合があります。
炎天下の中、お子さんと一緒にアスファルトの道路を歩く場合やベビーカーを使用する場合は、こまめに水分補給する、長時間の移動はしない等、注意しましょう。
熱中症の分類
熱中症は以下の4つに分類されています。
1.熱失神
暑さにより末梢神経の拡張により血流が減り、それに伴い血圧が低下します。そのため、脳に送られる血液も減ってしまうことからめまいや失神を起こしたりします。
炎天下の屋外や高温多湿の室内で長時間活動した場合に起こりやすくなります。
2.熱痙攣(けいれん)
汗として排出されるのは水分だけではなく、塩分も排出されています。
血液中の塩分(ナトリウム)濃度が低下すると電解質のバランスが崩れ、お腹や足の筋肉に痛みを伴うけいれんが起こります。
汗を大量にかいた時、水分だけを補給した場合に起こりやすくなります。
~パパ、ママ~ポイント!!
お酒を飲んだ夜、就寝中に足がつったというパパ、ママはおられませんか?
“足がつる”ことも筋肉の痙攣です。
お酒には利尿作用があり、頻繁にトイレに行くことで、体外へ水分を過剰に排出し、電解質のバランスが崩れ、足がつる(痙攣)を起こします。
特に、夏場は熱中症の心配もありますので、パパ、ママ、お酒を飲んだ後は適度にイオン飲料等を補給しましょう。
3.熱疲労
大量に汗をかき、水分の補給も足りず、塩分、水分共に不足した状態、重度の脱水症状を起こした状態です。
また、暑さにより末梢神経の拡張により血流が減り、それに伴い血圧が低下します。そのため、脳に送られる血液も減ってしまうことから、めまい、頭痛、嘔吐などの症状がみられます。
ただし、体温調節機能は正常に働いているため、発汗はあり、体温は平熱もしくは高くても40℃までのことがほとんどです。
4.熱射病
熱疲労が悪化した状態です。体温調節機能が働かなくなり、発汗せず、体温も40℃を超える場合が出てきます。頭痛、嘔吐、言動がおかしい、意識障害などの症状がみられます。
ここで、注意!!
汗が出なくなったら危険サインです。
体温調節機能が正常であれば体温が上がると、汗が出ることで体温を下げようとします。しかし、体温調節機能が働かなくなると汗が出なくなり、体温は上がる一方になります。
汗が出ている、出ていないは身体の状態を確認する重要なポイントです。
ただし、汗が出ているから大丈夫ではありません。汗が出るということは体温が上がっているということです。特に暑い時期は、そのまま放置するのではなく、涼しい場所に一時移動する、水分を補給するといった対策を心掛けましょう。
これら4つの分類を熱中症の重症分類で示すと、以下のようになります。
Ⅰ度(軽症)・・・熱失神、熱痙攣
Ⅱ度(中等症)・・・熱疲労
Ⅲ度(重症)・・・熱射病
対処法
1.熱失神
涼しい場所で衣服をゆるめ、安静にしながら水分補給をしましょう。
2.熱痙攣
涼しい場所で衣服をゆるめ、安静にしながら塩分を含んだ飲み物(イオン飲料、経口補水液など)を補給しましょう。
3.熱疲労
脱水症状を改善することが大切です。涼しい場所で衣服をゆるめ、安静にしながら塩分を含んだ飲み物(イオン飲料、経口補水液など)を補給しましょう。
ただし、嘔吐が激しい場合や体温の上昇が見られたら、すぐに病院へ運びましょう。
4.熱射病
すぐに病院へ運びましょう。体温を下げることが大切なので、病院へ運んでいる間、救急車を待っている間も氷や保冷剤などで、首、わきの下、太ももの付け根を冷やしましょう。
ここで、ポイント!!
効率よく体温を下げるには、血液を冷やすことが大切です。
首には頸動脈(けいどうみゃく)、わきには腋窩動脈(えきかどうみゃく)、太ももの付け根には鼠径動脈(そけいどうみゃく)という太い血管があります。これらの血管を冷やすことで効率よく体温を下げることができます。
ここで、注意!!
首は細かい血管や神経も集中している部位です。冷やし過ぎると返って気分が悪くなったり、頭痛を起こす場合があります。首を冷やす際には注意しましょう。
熱中症予防には、こまめな水分補給が大切です。
大人の場合は自分自身で意識して水分補給できますが、お子さんの場合はそうはいきません。
この時期、ママやパパが気を付けてあげないと、脱水状態になってしまいます。
脱水症状は熱中症だけでなく、お子さんの場合は風邪や下痢でも起きます。
そこで、次回は、熱中症②応用編として、お子さんの脱水症状について考えていきたいと思います。
…今回も、最後までお付き合い頂き誠に有難うございました!
【 “今日のすくすく赤ちゃん” のご紹介です】
兵庫県の光佑くん
(2015年10月生まれ、身長75cm、体重9kg)
~ママからのメッセージ~
よく笑う男の子です。乗り物が大好きで、電車や車を見つけると指を指して大興奮です。毎日公園で遊び、元気いっぱいです。
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筆者プロフィール:樋屋製薬株式会社 薬剤師/大阪家庭薬協会 品質部会副部会長