(第41回)夏に要注意!!~お子さんの熱中症②脱水症~
“今日のすこやかキッズ” の紹介は、コラムの最後に登場です♥
蒸し暑い日が続く中、前回は「熱中症」について、基礎編ということで熱中症全般について考えました。熱中症を予防するには、適度な水分補給は必須です。
ママ、パパは意識して水分を摂ることができますが、お子さんはそうはいきません。ママが気付いたときには、脱水症を起こしていた・・・となっては大変です。また、お子さんの中には普段からあまり水分を摂らない傾向のお子さんもいて、ママを心配させています。
そこで、今回は、お子さんの脱水症について考えていきます。
脱水症とは
水と電解質(イオン)で構成されている体液が不足した状態をいいます。
【電解質(イオン)とは】
細胞の浸透圧の調節、心筋や骨格筋の収縮、神経や筋の活動など、身体にとって重要な働きをしています。
電解質はバランスが大切で、多すぎても少なすぎても細胞や臓器の機能が低下します。
主な電解質には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、クロールなどがあり、これらはミネラルに属します。
体液の割合は
身体の水分(体液)が占める割合は、一般的に、大人で60%、小児で70~80%です。
子どもの肌には弾力があり、潤っているのはこのためです。
ここで、注意!! 子どもは脱水症になりやすい!!
子どもの体内には水分がたくさんあるから大丈夫・・・ではありません。
それだけ、水分量の影響を受けやすいのです。
また、細胞内における水分のバランスも大人とは違います。
体液は細胞膜を介して、細胞内液と細胞外液に分けられます。細胞内液に比べ、細胞外液はその量が変化しやすくなっているため、細胞外液が減少した時には細胞内液が細胞外へ移動し、カバーします。つまり、体液の減少は細胞外液から始まります。
細胞内液と細胞外液の割合は、大人では、細胞内液40%、細胞外液20%となっていて、細胞外液が減少しても細胞内液でカバーしやすくなっています。
一方、小児では、細胞内液35%、細胞外液30%と、細胞外液の占める割合が多く、それに比べ細胞内液の割合は少なくなっています。
このため、子どもは大人に比べて、体内の水分量が変化(枯渇)しやすく、脱水症になりやすくなっています。
また、子どもは汗かきです。発汗によって体内の水分が失わやすくなっています。
(お子さんの汗については、今後のコラムで考えていきたいと思います)
子どもの脱水症の症状
お子さんに以下の様子(どれか1つでも)が見られたら、脱水症を疑ってみてください。
1.普段と比べておしっこの回数が少ない
2.泣いた時に涙が出ない
3.唇や口の中が乾燥している
4.おなかの皮ふのハリがなく、しわになっている
5.手足が冷たい
脱水症になると水分が不足するため血流が少なくなり、手や足などの末端にまで血液が届かなくなり、手足が冷たくなります。気温は高いのに、手足は冷たいといったときは、脱水症を疑ってください。
食欲がない、ぐったりしている、機嫌が悪いといった様子も脱水症から起きている場合があります。
ここで、ポイント!!
乳幼児の場合は、普段の体重を把握できていれば、体重の減少(体重の3%以上)でも脱水症の判断が出来ます。
一般的に、ヒトは体内の水分が2%減少すると、のどの渇きを感じます。3%以上になると、強いのどの渇きの他にぼんやりする、食欲不振、尿量減少などの症状があらわれるようになるといわれています。
お子さんの脱水症の対応
お子さんの意識が朦朧としていたり、嘔吐を繰り返す、痙攣を起こすといった状態の場合はすぐに病院へ連れて行ってあげてください。
そうでない場合は、まずは水分補給をしてあげてください。
お子さんが飲みやすいミネラルウォーターや麦茶でもかまいませんが、脱水状態が進んでいるようであれば、電解質や糖質を含む経口補水液が良いでしょう。
ここで、ポイント!!
水分補給には、「麦茶」がおすすめです。
麦茶の元になっている“大麦”にはミネラルが含まれているため、失われたミネラルの補給が出来ます(全てではありませんが)
また、麦茶にはカフェインが含まれていないため、小さいお子さんにも安心して飲ませてあげられます。
そういう点では、ミネラルウォーターも良いでしょう。
ここで、注意!!
お子さんが水分を飲まないからといって、市販のジュースを与えるのはやめましょう。
市販のジュースに含まれている糖分の含有量は高く、そのため、飲んでもさらに喉の渇きを感じてしまうという悪循環になってしまいます。
水分補給のポイント!!
水分を一度に多量を飲ませると嘔吐してしまう場合があります。嘔吐することにより、さらに脱水症は進行し、体力も消耗します。
まずは、一度、水分を与えたら、しばらく様子をみて、飲んだものを吐かないか確認しましょう。
吐かないようであれば、少しずつ、回数を分けて(15分間隔ぐらいで)与えるようにします。
もし、吐いてしまうようであれば、30分~1時間は何も与えずに、様子をみましょう。様子が落ち着いてきたら、再度、少量の水分を与えてください。
嘔吐を何度も繰り返すようであれば、病院へ連れて行ってあげてください。
また、脱水により内臓の機能が低下しています、キンキンに冷えたものではなく、常温で与えましょう。
授乳中の場合は、まずは母乳、ミルクで水分補給をしてあげてください。
ここで、どうすれば良い?!~イオン飲料~
市販のイオン飲料は手軽にどこでも手に入れることが出来るため、脱水症の予防・対処時に大きな役割を果たします・・・が、誰でも飲んで良いのでしょうか?
大人と子どもでは、体内での水分の吸収、喪失のメカニズムが違います。離乳食が完了したお子さんならそのまま与えてもかまいませんが、そうでない場合は出来るだけ乳幼児用のイオン飲料を与えるようにしましょう。
「市販のイオン飲料を水で薄めれば良い」と思われるママもおられると思いますが、水で薄めたものは、その中に含まれている水分と電解質のバランスを崩してしまうので、そのままで飲むよりも、体内での吸収が悪くなる場合があります。
ここで、どうすれば良い?!~経口補水液~
経口補水液は市販のイオン飲料に比べて、電解質濃度が高く、糖濃度は低くなっています。軽度~中程度の脱水、疾病による脱水、過度な発汗による脱水状態の際に飲用するのが適しています。そのため、一般的なイオン飲料とは違い、1日当たりの摂取量が設定されています。
お子さんに与える前にはパッケージに書かれている説明文をよく確認しましょう。
また、イオン飲料と同じく、水で薄めることはおすすめしません。
お子さんの脱水症の状態によって、ミネラルウォーター、麦茶、イオン飲料、経口補水液を使い分けましょう。
脱水症の原因
脱水症は熱中症だけでなく、風邪などのウィルス性感染症、細菌感染症からの下痢、嘔吐、発熱などでも起きます。
お医者様の診察の際、「水分は摂れていますか?」、「おしっこは出ていますか?」と質問されるのは、脱水症の発症を確認されているからです。脱水症は進行すれば、入院といった事態にもなります。
お子さんの脱水症はママ、パパが注意してあげないといけません。
お子さんに脱水症の症状がみられたら、適切な対応をしてあげてください。
また、お子さんが脱水症にならないように日常からの生活習慣なども含めた予防も大切です。
そこで、次回は、お子さんの脱水症の予防について考えていきたいと思います。
…今回も、最後までお付き合い頂き誠に有難うございました!
【 “今日のすこやかキッズ” のご紹介です】
兵庫県の亜子ちゃん
(2011年10月生まれ、身長102cm、体重15kg)
~ママからのメッセージ~
我が家のやんちゃな一人娘。しっかり者で頼りになる反面甘えたなところもあります。最近は、出来ない事に取り組む姿勢や言葉使いを気にかけてるところに成長を感じます。内面から出てくる美しい女性になって欲しいものです。
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筆者プロフィール:樋屋製薬株式会社 薬剤師/大阪家庭薬協会 品質部会副部会長