(第46回)夏に要注意!!~お子さんの汗かき③汗の臭い~
“今日のすこやかキッズ” の紹介は、コラムの最後に登場です♥
前回のコラムではお子さんの“あせも”について考えました。
汗をかきやすいお子さんに出来やすいあせも。
自分で汗を上手に拭き取れない、思うように上手く着替えが出来ないお子さんに出来やすいあせも。
あせもはお子さんが患部を掻いたり、「かゆい」と訴えたりと自覚症状もあり、また、見た目でもあせもの存在はわかりやすいです。
それとは反対に自覚症状もなく、見た目でもわからないのが「汗の臭い」です。
最近では「スメルハラスメント」という言葉もあり、「臭い」は本人が気付かないまま周囲に迷惑をかけている場合があります。
お子さんの発する臭いについて、ママ達は「お線香臭い」、「酸っぱい」、「ツンとする」などいろいろな表現をされます。
なぜ、お子さんからこのような臭いがするのでしょうか?
そこで、今回は、お子さんの“汗の臭い”について考えていきます。
“汗の臭い”とは
基本的に汗はほぼ無臭です。
では、なぜ、汗をかくと臭うのか?それは、“汗の臭い”は、汗が酸化したり、汗が毛穴や皮膚の表面にいる常在菌によって分解され、それが臭いの原因物質に変化することで発されます。
ここで、ポイント!!
常在菌とは、健康なヒトの身体に日常的に存在する菌のことをいいます。例えば、ヨーグルトの宣伝などでよく目にする“ビフィズス菌”も腸内に存在している“常在菌”です。
皮膚にも常在菌は存在し、皮膚常在菌といわれています。皮膚常在菌は汗や皮脂を栄養分として繁殖します。
ここで、注意!!
では、皮膚常在菌を全て無くせば汗の臭いは気にならない、でしょうか?
皮膚常在菌の中には皮膚にとって重要な働きをする常在菌もいます。例えば、表皮ブドウ球菌といわれる常在菌が皮脂や汗を分解して作り出す物質は皮膚のバリア機能を保つ働きがあります。
なので、皮膚常在菌を無くせば良いというわけではありません。
お子さんの“臭い”の原因
【原因1】 頭皮
頭皮は最も皮脂が多く分泌される場所です。また、髪の毛などにより皮脂が溜まりやすい場所でもあります。
実は大人も子どもも汗腺数は変わりません。しかし、子どもは大人に比べて体が小さい(体表面積が小さい)ため、面積当たりの汗腺数が密集しています。
また、子どもの汗腺は大人に比べて未熟ですが、その中でも頭の汗腺はある程度発達しているため、子どもは頭から汗をかくことが多いのです。
皮脂と汗が混ざり合うことで菌の繁殖が活発化されるため、特にお子さんの頭皮の臭いの原因になっている場合が多くあります。
【原因2】 頭髪
髪の毛は表面積が大きいため臭いの成分が吸着されやすく、吸着した臭いを拡散します。
【原因3】 衣服
汗で濡れた衣服をそのまま(着たまま)にしていると、高温多湿の中で菌が繁殖します。
ここで、ポイント!!
臭いの中でも気になるのは“わきの臭い”(ワキガ)です。ワキガは2種類ある汗腺のうち“アポクリン腺”から出る汗が原因となっています。
このアポクリン腺はわきの下、おへそのまわりなど体の局所に分布しています。
ワキガはアポクリン腺の分泌が盛んな人に多くみられ、アポクリン腺は10~12歳頃に一気に成長するといわれています。
お子さんが小さいうちは気になりませんが、この年頃になると・・・という場合もありますので、気を付けてあげてください。
ここで、注意!!
汗の臭いの中には病気が原因のものもあります。
体臭や口臭が“生臭い” 【魚臭症(トリメチルアミン尿症)】
トリメチルアミンは魚の鮮度が落ちた時などに感じる“生臭さ”の原因となる物質です。
摂取した食物を体内で消化分解した際に発生したトリメチルアミンが代謝障害などにより肝臓で分解されず、汗や尿、呼気の中に混ざって排出されてしまう疾患です。
残念ながら、この疾患についての根本的な治療法は確立されていません。対処法としては、トリメチルアミンになる前段階の物質であるコリン、レシチンなどを多く含む食品の摂取を控えることが有効といわれています。
臭いの対処法
【対処1】 汗はこまめに拭く、衣服を着替える
汗をかいたらこまめに拭きましょう。また、汗で濡れた衣服は着替えさせてあげましょう。
【対処2】 お風呂やシャワーで清潔にする
お風呂に入った時やシャワーの時に、汗や皮脂を洗い流しましょう。特に、頭皮はしっかりと皮脂を洗い流すようにしましょう。
ここで、注意!!
体や頭皮の汗や皮脂をしっかりと洗い流すために、石鹸やシャンプーを使いすぎるのはNGです。
石鹸やシャンプーを使いすぎると、健康な皮膚を維持するために必要な常在菌まで洗い流してしまう場合があります。石鹸やシャンプーの洗い残しがあると、そこから菌が繁殖します。頭皮の場合はフケの原因にもなります。
暑い時期は1日のうちに何度もシャワーをしたくなりますが、石鹸やシャンプーを使うのは1日1回程度にするようにしましょう。
また、ゴシゴシと体を強く擦ったり、頭皮に爪を立てて洗うのもやめましょう。皮膚を傷める原因になります。
お子さんが自分できちんと洗えるようになるまでは、ママがお手伝いしてあげるようにしましょう。
ここで、ポイント!!
お風呂やシャワーをした後はきちんと水分を拭き取りましょう。体についた水分は大き目のタオルやバスタオルで簡単に拭き取れますが、頭皮はそうはいきません。髪の毛の長さにもよりますが、タオルドライだけでは完全には乾きにくいものです。
ヘアドライヤーを使用する際には、髪の毛ではなく、まずは頭皮(髪の付け根)を乾燥させるようにしましょう。髪の毛が乾いても、頭皮は乾燥出来ていない場合があります。頭皮に湿気が残ったままだとそこからすぐに菌が繁殖します。
お子さんの場合、お風呂の後にテレビが見たい、遊びたい、眠たいと言って、頭を乾かさずにいる場合がありますが、そこはママが気を付けてあげてください。
【対処3】 食事内容を見直す
動物性のタンパク質や脂質の多い食事を摂り過ぎると皮脂の分泌が増えます。から揚げやフライなどお子さんは大好きな食べ物ですが、臭いが気になる場合は普段の食事内容を見直してあげてください。
“汗の臭い”は自分自身の臭いも他人の臭いも気になりますよね。
ただ、お子さんがたくさん汗をかくことは身体機能として必要なことです(むしろ、汗をかかない方が深刻な状態です^^;)なので、汗の臭いはあって仕方のないものです。あまり神経質にはならないようにしてあげてください(^^)
8月ももうすぐ終わります。日中はまだまだ蒸し暑いですが、朝晩は幾分、過ごしやすくなってきました。これからの季節の変わり目には体調を崩しがちです。
そこで、次回は、お子さんの夏バテ後遺症(秋バテ)について考えていきたいと思います。
…今回も、最後までお付き合い頂き誠に有難うございました!
【“今日のすこやかキッズ”のご紹介です】
神奈川県の大洋くん
(2014年11月生まれ、身長85cm、体重11kg)
~ママからのメッセージ~
3人兄弟の次男です。恐竜と昆虫、乗物などに興味があります。4歳の長男と毎日ケンカしています。いつもとても陽気です。
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筆者プロフィール:樋屋製薬株式会社 薬剤師/大阪家庭薬協会 品質部会副部会長