(第52回)秋から注意!!インフルエンザ③~インフルエンザ治療薬(抗インフルエンザウイルス薬)~
“今日のすこやかキッズ” の紹介は、コラムの最後に登場です♥
先日の3連休は、夏が戻ってきたかのような天候にびっくりされた方も多かったのではないでしょうか(^^;)
雨で冷え込んだり、日差しで暑くなったり、このような激しい気温差の中では、体調を崩しやすくなります。特に、風邪やインフルエンザなどの感染症はこれからの時期から増えていきます。
そこで、今回は、前回に引き続き、“インフルエンザ”をテーマに、「インフルエンザの治療薬」について考えていきます。
インフルエンザ治療薬(抗インフルエンザウイルス薬)とは
インフルエンザ治療薬はインフルエンザウイルスの増殖を防ぐものであり、インフルエンザウイルスそのものを退治するものではありません。
なので、インフルエンザウイルスが増殖してしまった後では効果は期待できません。
そのため、インフルエンザ治療薬は、「インフルエンザを発症してから48時間以内に使用を開始する」が目安となっています。
48時間経過後に使用を開始した場合の有効性は確認されていませんので、医療機関を受診した時に、発症後48時間を超えている場合は、インフルエンザ治療薬は処方されない場合があります。
インフルエンザ治療薬の種類
医療機関で処方される代表的なインフルエンザ治療薬についてご紹介します。
1 オセルタミビルリン酸塩(製品名:タミフル)
A型またはB型インフルエンザウイルス感染症の治療に用いられます。
カプセル剤と散剤(ドライシロップ)があり、一般的に年齢の低いお子さんの場合は散剤が処方されます。
通常、1日2回、5日間、服用します。
2 ザナミビル水和物(製品名:リレンザ)
A型またはB型インフルエンザウイルス感染症の治療に用いられます。
この薬は専用の吸入器(ディスクヘラー)を使用して薬剤(粉末)を吸入する“吸入薬”です。直接、気道に薬剤が届くため、気道で増殖するインフルエンザウイルスの増殖を防ぐ効果があります。
通常、1日2回、5日間、吸入します。
3 ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(製品名:イナビル(吸入粉末剤))
A型またはB型インフルエンザウイルス感染症の治療に用いられます。
この薬も吸入薬です。
この薬が他のインフルエンザ治療薬と違う点は、効果の持続時間が長いため1回の吸入のみで治療がほぼ完了することです。
ただし、そのためには、1回の吸入をしっかりと行うことが必要です。
ここで、ポイント!!
吸入薬は使用前に使用方法等をお医者様や看護師又は薬剤師からきちんと説明を受ける必要があります。お子さんへの使用はお医者様が「適切に使用できる」と判断された場合にのみ処方されます。
吸入薬は普段から使い慣れていないと上手く吸入できない場合があります。状況によっては、お医者様や看護師又は薬剤師にその場で指導を受けながら吸入することをおススメします。
ここで、注意!!
ザナミビル水和物(製品名:リレンザ)とラニナミビルオクタン酸エステル水和物(製品名:イナビル(吸入粉末剤))には、乳蛋白を含む乳糖水和物が使用されているため、乳製品に対してアレルギーがあるお子さんなどは必ずお医者様に相談するようにして下さい。
インフルエンザ治療薬によるお子さんの異常行動について
以前、インフルエンザ治療薬のタミフルを服用した子どもの異常行動に関する報道が多数ありました。
その後、平成21年6月の安全対策調査会の報告として、厚生労働省は、タミフルと異常行動の因果関係について統計学的な有意差を確認することは困難であり、タミフル服用の有無にかかわらず、異常行動はインフルエンザ自体に伴って発現する場合があることが明確となったとしています。
現在では、タミフルだけでなく全てのインフルエンザ治療薬は、小児・未成年者の使用について、「自宅にて療養する場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないように配慮すること」とされています。
また、急に走り出す、ウロウロする等といった異常行動はインフルエンザ治療薬の使用がない場合でも報告されています。
お子さんがインフルエンザに感染した場合、インフルエンザ治療薬の使用の有無にかかわらず、周囲にいる大人はお子さんの様子に注意してあげて下さい。
こんな時はどうしたら良いの?! お子さんへの解熱鎮痛薬の使用について・・・
高熱を出したお子さんの辛そうな様子を見ていると、ママはなんとかしてあげたくなりますよね。特に、医療機関の診察が終わった夜間の発熱は心配になります。そうなるとまずは“熱を下げる”となるのですが、ここで注意です。
インフルエンザによる発熱の時に、以下の成分が配合された解熱鎮痛薬を使用することはインフルエンザ脳症の発生や重症化に関係する可能性があるため、特に、お子さんについては使用を控えるようにして下さい。
〇アセチルサリチル酸(アスピリン)
〇メフェナム酸
〇ジクロフェナクナトリウム
尚、ドラッグストアなどで購入できる市販薬の中で「小児用」となっている解熱鎮痛薬に配合されている成分は基本的に「アセトアミノフェン」です。
しかし、大人用となるとそうではなく、上記の3成分をそれぞれ配合した市販薬があります。
お子さんが急に高熱を出したからといって、ママやパパが使用している解熱鎮痛薬を代用するようなことは絶対にしないで下さい。
高熱となると気になるのが、脳へのダメージですが、一般的に、41℃未満では熱そのものが原因で脳にダメージを与えることはないといわれています。
ここで、ポイント!!
インフルエンザ治療薬はあくまでもインフルエンザウイルスの増殖を防ぐものです。つまり、インフルエンザウイルスそのものを退治するのは自分自身の力(自然治癒力)です。
発熱は体がウイルスと闘っているという身体症状です。状況によっては、発熱したからすぐに熱を下げるのではなく、発熱により消耗した水分、栄養を適切に補うことで闘う力を育てることも大切なことではないでしょうか。
これからの時期は、突然の場合に備えて、かかりつけのお医者様に事前に対応を確認しておくこともおススメです。
妊婦、授乳婦のインフルエンザ治療薬の使用について
厚生労働省のホームページでは、「新型インフルエンザ対策(A/H1N1)妊娠中の人や授乳中の人へ」というパンフレットの中で、妊婦のインフルエンザ治療薬の使用について、以下のように記載されています。
『2007年の米国疾病予防局ガイドラインには、「抗インフルエンザ薬を投与された妊婦および出生した赤ちゃんに有害な副作用の報告はない」との記載があり、タミフルなどを服用するメリットのほうが、副作用(下痢や嘔吐など)のデメリットより大きいと考えられています。タミフルは胎児に悪影響を及ぼさないことが最近報告されました。リレンザも、局所で作用するため母親の血中に移行する量もごくわずかで、胎児に重大な影響を及ぼす可能性は少ないとされています』
また、授乳婦のインフルエンザ治療薬の使用については、以下のように記載されています。
『タミフルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬を使用した母親の母乳には、その薬剤がごく微量ですが、含まれています。製薬会社によるタミフル及びリレンザの説明書には「授乳婦に投与する場合には授乳を避けさせること」と記載されていますが、欧米では、「母乳中への移行はわずかで、タミフルの1歳未満への投与量に満たない」とのデータを根拠に、授乳の継続は可能としています』
妊婦がインフルエンザを発症すると、肺炎など重症化しやすいといわれています。
授乳中の母親の場合なら、常に母親と密着している子どもへの感染も懸念されます。
インフルエンザの症状が出たら、なるべく早く医療機関を受診し、治療についてお医者様とよく相談されるようにして下さい。
インフルエンザは発症すると高熱や嘔吐など身体への負担が大きく、看病する家族、一緒に生活する家族への感染も心配です。インフルエンザへの対処法の中で1番良い方法は、まずは「インフルエンザに感染しない」ことです(^^)
そこで、次回は、インフルエンザの予防法について考えていきたいと思います。
…今回も、最後までお付き合い頂き誠に有難うございました!
【 “今日のすこやかキッズ” のご紹介です】
神奈川県の芽衣花ちゃん
(2006年6月生まれ)
~ママからのメッセージ~
将来の夢は獣医です。動物のお医者さんになるために色々頑張っています!
※今回のすくすくキッズは、第47回のコラムに登場してくれた芽衣花ちゃんです。
掲載のお礼として送付させて頂いたグッズと一緒に決めポーズをしてくれた写真を送って頂きました(^^)
《お知らせ》
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筆者プロフィール:樋屋製薬株式会社 薬剤師/大阪家庭薬協会 品質部会副部会長