(第56回)冬にも注意!お子さんの病気~感染性胃腸炎~

 

 

 

“今日のすくすく赤ちゃん” の紹介は、コラムの最後に登場です

 

 

 

立冬(今年は11月7日)を過ぎ、暦の上では“冬”になりました。

 

 

 

これまでこの育児コラムでは5回に渡り、“インフルエンザ”について考えてきました。

詳細はコチラをご覧ください↓

 

(第50回)秋から注意!!インフルエンザ①~インフルエンザ脳症~

(第51回)秋から注意!!インフルエンザ②~インフルエンザワクチン~

(第52回)秋から注意!!インフルエンザ③~インフルエンザ治療薬(抗インフルエンザウイルス薬)~

(第53回)秋から注意!!インフルエンザ④~インフルエンザの予防法~

(第55回)秋から注意!!インフルエンザ⑤~インフルエンザ総まとめ~&イベント報告

 

 

 

街の中、電車の中でもマスク姿の人を多く目にするようになってきました。

しかし、この時期に注意するべきお子さんの病気はインフルエンザだけではありません。

 

 

 

そこで、今回は、「感染性胃腸炎」について考えていきます。

 

 

 

 

感染性胃腸炎とは

 

 

細菌やウイルスなどが原因となって、発熱、下痢などの胃腸炎の症状を起こす感染症です。

 

 

多くの細菌、ウイルスが感染性胃腸炎の原因となる病原体となりえます。

 

 

 

代表的なものは

 

細菌性・・・腸炎ビブリオ、病原大腸菌、サルモネラ、カンピロバクターなど

 

ウイルス性・・・ノロウイルス(SRSV)、ロタウイルスなど

 

 

 

 

 

感染性胃腸炎の症状

 

 

病原体により様々ですが、主な症状は、

 

〇発熱

〇下痢(水様便、血便など)

〇悪心

〇嘔吐

〇腹痛 など

 

 

発熱が先行し、下痢が遅れて出現したり、発熱を伴わず、下痢のみのこともあります。

 

 

 

 

感染性胃腸炎の潜伏期間、原因食品

 

 

病原体により違います。代表的なものは、

 

 

【腸炎ビブリオ】

潜伏期間・・・10~24時間

代表的な原因食品・・・魚介類の刺身、すし類

 

 

【サルモネラ】

潜伏期間・・・5~72時間

代表的な原因食品・・・卵および卵製品、洋菓子類、加熱不十分な食肉

 

 

【病原大腸菌(腸管出血性大腸菌を除く)】

潜伏期間・・・12~72時間

代表的な原因食品・・・お弁当や給食を原因とする事例の発生がありますが、多くの事例では原因食品の特定が困難

 

 

【カンピロバクター】

潜伏期間・・・2~5日

代表的な原因食品・・・鶏肉、殺菌不十分な井戸水

 

 

【ロタウイルス】

潜伏期間・・・1~3日

代表的な原因食品・・・飲料水、食物(特定が困難)

 

 

【ノロウイルス】

潜伏期間・・・1~2日

代表的な原因食品・・・カキなど貝類

 

 

 

ここで、注意!!

 

 

病原大腸菌の中には、ベロ毒素を産生し、出血を伴う腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こす“腸管出血性大腸菌”と呼ばれるものがあります。代表的なものはO(オー)157、O26、O111などがあり、重症化するものの多くはO157が原因となっています。

 

 

 

【腸管出血性大腸菌感染症】

 

O157などの腸管出血性大腸菌により引き起こされる感染症です。季節を問わず発生しますが、特に夏は多く発生しています。

 

 

潜伏期間は10時間~6日、全く症状のない場合から激しい腹痛、血便をあらわす場合など様々です。合併症として溶血性尿毒症症候群や脳症を併発し、溶血性尿毒症症候群を発症した患者の約1~5%が死亡するとされています。

 

 

なお、乏尿や出血傾向、意識障害は溶血性尿毒症症候群や急性脳症の合併を示唆する症状であり、このような場合は速やかに医療機関を受診して下さい。

 

 

 

ここで、注意!!

 

腸管出血性大腸菌の感染者の報告数は0~4歳児が最も多いといわれています。感染後の発症率も9歳以下は約80%と高くなっています。

 

 

ここで、ポイント!!

 

腸管出血性大腸菌感染症は全世界で発生している感染症であり、日本では2011年(平成23年4月)に生肉(ユッケ)、2012年(平成24年8月)に漬物を原因食とする、死亡例を伴う大規模な集団感染がみられました。

 

 

平成24年7月から、食品衛生法に基づいて、牛のレバー(肝臓)を生食用として販売・提供することが禁止されました。

 

 

これは、腸管出血性大腸菌が検出されやすい牛の肉・肝臓の生食を特に規制の対象としたものです。

 

 

牛の肝臓だけでなく、他の動物の肉や内臓も、生で食べると食中毒の危険があります。これらのものは、中心部まで十分に加熱調理して食べることが重要です。特に、子どもや高齢者などの抵抗力の弱い方については、生肉は食べないよう、また食べさせないようにすることも重要です。

 

 

 

 

感染性胃腸炎の治療

 

 

感染性腸炎は一般的には治療の原則は対症療法です。

 

 

下痢に伴う脱水症状には点滴による輸液を行います。抗生物質は使用しないことが多いですが、カンピロバクター感染症、サルモネラ感染症、腸管出血性大腸菌感染症などでは、患者の状態により抗生物質を使用する場合があります。

 

 

 

ここで、注意!!

 

 

下痢止め薬や胃腸の働きを抑える鎮痙薬の使用は腸管内溶物の停滞時間を延長することで、毒素の吸収を助長する可能性があり、原則的に使用されません。

 

 

ご家庭でも、感染性胃腸炎の症状があらわれたからといって、安易な下痢止めの使用は避けるようにして下さい。

 

 

 

ここで、ポイント!!

 

 

感染性胃腸炎の治療で重要なのは“水分の管理”です。水分をこまめにとり、脱水症状を起こさないように注意しましょう。

 

 

特に、体力の弱い乳幼児や高齢者は水分と栄養の補給を十分に行い、体力を消耗しないようにすることも重要です。

 

 

 

 

ここで、疑問?? 外出、登校はどうしたら良いの??

 

 

学校保健安全法施行規則の中で、感染症の予防として、学校において予防すべき感染症の種類が分類されています。感染性胃腸炎については下記のとおりです。

 

 

腸管出血性大腸菌感染症

 

〈 第3種感染症 〉

学校教育活動を通じ、学校において流行を広げる可能性があるもの。

出席停止の期間の基準は、共通して「病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで」

 

 

 

ロタウィルス感染症、ノロウィルス感染症、サルモネラ感染症(腸チフス、パラチフスを除く)、カンピロバクター感染症

 

〈 第3種感染症 その他の感染症 〉

学校で流行が起こった場合にその流行を防ぐため、必要があれば、校長が学校医の意見を聞き、第3種の感染症としての措置をとることができる疾患。

 

 

 

 

感染性胃腸炎は日常生活の中でいつでも起こり得るものです。

今年の8月にはポテトサラダが原因食となった腸管出血性大腸菌O157による感染がニュースになりました。

 

 

感染性胃腸炎に関する正しい知識を持つことで、感染の予防、感染後の感染拡大を最小限にすることは、大切なお子さん、そして大切なご家族を守ることになります。

 

 

感染性胃腸炎の中でこれからの時期(11月~1月)にかけて流行がみられるものに「ノロウイルス感染症」があります。

 

 

そこで、次回は、冬に注意するべきお子さんの病気として、「ノロウイルス感染症」について考えていきたいと思います。

 

 

…今回も、最後までお付き合い頂き誠に有難うございました!

 

 

 

“今日のすくすく赤ちゃん” のご紹介です】

 

56

 

兵庫県の凛ちゃん

(2015年7月生まれ、身長83cm、体重11kg)

 

~ママからのメッセージ~

ダンスと歌が大好きな女の子です♪ もうすぐ妹が生まれるのでお姉ちゃんになります。優しいお姉ちゃんになってね。

 

 

 

 

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筆者プロフィール:樋屋製薬株式会社 薬剤師/大阪家庭薬協会 品質部会副部会長