(第57回)冬に注意するべきお子さんの病気~ノロウイルス感染症①~
“今日のすこやかキッズ” の紹介は、コラムの最後に登場です♥
冬に流行する病気の代表的なものに「インフルエンザ感染症」、「ノロウイルス感染症」、「ロタウイルス感染症」などがあります。
ノロウイルス感染症はいわゆる感染性胃腸炎の一種です。
子どもから大人まで感染し、家族の中で1人が感染すると瞬く間に家族中に感染が拡がってしまうほどの感染力の強い感染性胃腸炎です。
これからの時期は年末に向けて、パパやママは外での飲食の機会が増える時期でもあります。感染性胃腸炎には注意しないといけません。
そこで、今回は、「ノロウイルス感染症」について考えていきます。
ノロウイルス感染症とは
以前はSRSV(小型球形ウイルス)と呼ばれていたノロウイルスにより引き起こされる感染症です。
季節を問わず発生しますが、特に11月~2月頃にかけて多く発生します。
ノロウイルスの潜伏期間
潜伏期間は1~2日間です。
ノロウイルスの原因食
代表的なものは牡蠣などの二枚貝類です。
二枚貝は大量の海水を取り込み、プランクトンなどのエサを体内に残し、出水管から排水していますが、海水中のウイルスも同様のメカニズムで取り込まれ二枚貝の体内で濃縮されるため、これらを生や加熱不十分な調理で食べることによりノロウイルスに感染すると考えられています。
一般的に「牡蠣はあたりやすい」と言われますが、これは、牡蠣を生食することでノロウイルス感染症になる患者が多いことから由来していると考えられます。
ここで、注意!!
ノロウイルス感染症の原因食となるものは牡蠣などの貝類だけではありません。
今年の2月には“焼き海苔(刻み海苔)”が原因食となったノロウイルス感染症の報告がされています。
その後の都道府県の調査から、刻み海苔の加工施設からノロウイルスが検出され、当該施設の従事者がノロウイルス予防対策について十分認識していなかったことが確認されました。
これに伴い、厚生労働省からは「加熱せず喫食する乾物等の食品によるノロウイルス食中毒予防の徹底について」という通知が各都道府県へ通達されました。
ノロウイルス感染症の症状
主な症状は
〇吐き気
〇嘔吐
〇下痢
〇腹痛 など
発熱は軽度の場合が多く、他に悪寒、咽頭痛、倦怠感などを伴う場合もあります。
通常、上記のような症状が1~2日続いた後、治癒し、後遺症はありません。
ノロウイルス感染症の治療(対処法)
現在、このウイルスに効果のある抗ウイルス薬はありません。
通常、対処療法が行われます。下痢に伴う脱水症状には点滴による輸液が行われます。
特に、体力の弱い乳幼児、高齢者は、脱水症状を起こしたり、体力を消耗したりしないように、水分と栄養の補給を充分に行いましょう。
ここで、ポイント!!
下痢の時は便中に水分とともに電解質(ナトリウムやカリウム)も失われるため、電解質の補給、また少量の糖分の補給も必要です。
水分補給には、お茶や白湯だけではなく、経口補水液やイオン飲料などの電解質や糖分を含む飲み物の併用が必要となります(イオン飲料は糖分が多く含まれていますので、イオン飲料ばかり補給していては却って糖分の摂り過ぎになってしまいますので、あくまでも、お茶や白湯との併用が大切です)
嘔吐を伴う場合は、30分おきを目安に、少量ずつ与えましょう。
ノロウイルス感染症の感染経路
ノロウイルス感染症の感染経路はくしゃみや咳などの際に出る飛沫によって感染する「飛沫感染」、唾液、鼻水がついた物や手に触れることで感染する「接触感染」、便に接触した後、洗浄が不十分なために感染する「経口(糞口)感染」があります。
また、ノロウイルスは感染力が強く、乾燥した吐物などからウイルスが空中を浮遊することによる「空気感染」もあります。
ここで、注意!!
ノロウイルスは便中や吐物に多く排出されます。感染力は症状が急激にあらわれ始めた時期(急性期)が最も強く、便中にウイルスが3週間以上排出されることもあります。
床などに飛び散った患者の便や吐物を処理する際には、使い捨てのエプロン、マスク、手袋を着用し、汚物中のウイルスが飛び散らないように、便や吐物をペーパータオル等で静かに拭き取りましょう。
拭き取った後は次亜塩素酸ナトリウム(濃度0.05%~0.1%)(家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも可)で浸すように床などを拭き取り、その後水拭きをしましょう。おむつなどは速やかに閉じて便などを包み込みます。
おむつや拭き取りに使用したペーパータオルなどはビニール袋に密閉して廃棄しましょう。
ノロウイルスは乾燥すると容易に空中を浮遊します。これが口に入って感染することがありますので、便や吐物は乾燥しないうちに速やかに処理しましょう。また、室内であれば、ウイルスが外に出て行くように空気の流れに注意しながら十分に換気を行いましょう。
12日以上前にノロウイルスに汚染されたカーペットを通じて、感染が起きた事例もあり、時間が経っても患者の便、吐物やそれらにより汚染された床や手袋などには感染力のあるウイルスが残っている可能性があります。このため、これら感染源となるものは必ず処理をしましょう。
処理した後は手洗いとうがいを入念に行いましょう。
ここで、ポイント!!
家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤を使用する場合、容器に表示されている次亜塩素酸ナトリウム濃度を確認して、濃度を調製しましょう。
例)次亜塩素酸ナトリウム濃度が6%の場合
0.1%濃度・・・塩素系漂白剤10mLに水を加えて600mLにする
0.05%濃度・・・塩素系漂白剤5mLに水を加えて600mLにする
尚、濃度調製した液は次亜塩素酸ナトリウムが分解されやすくなっています。長期の保存はせず、なるべくその都度調製するようにしましょう。
ノロウイルス感染症の予防、感染拡大防止
【 加熱処理 】
一般的にウイルスは熱に弱く、加熱処理はウイルスの活性を失わせる有効な手段です。
ノロウイルスの汚染の恐れのある牡蠣などの二枚貝類の食品は、中心部が85℃~90℃で90秒以上の加熱が望まれます。
ノロウイルスに汚染された可能性のある調理器具(まな板、包丁、食器、布巾など)は洗剤で十分に洗浄した後、熱湯(85℃以上)で1分間の加熱が有効です。
リネン類(シーツ、布団など)は洗剤を入れた水中で静かにもみ洗いし、下洗いをした後、85℃、1分間以上の熱水洗濯が有効です。ただし、熱水洗濯が行える洗濯機でない場合は次亜塩素酸ナトリウムでの消毒が有効です。その際、すすぎを十分に行い、高温の乾燥機などを使用すると殺菌効果は高まります。
すぐに洗濯できない布団などの場合は、汚物の付着した部分をよく乾燥させ、スチームアイロンや布団乾燥機を使用すると効果的です。
【 うがい、手洗いの励行 】
外出先からの帰宅時のうがい、手洗いをこまめに行いましょう。また、トイレの使用後、調理前にも入念に手洗いを行いましょう。手洗いの際には、指と指の間、爪の先、手首までしっかり洗いましょう。
ここで、ポイント!!
ノロウイルスは速効性すり込み式手指消毒剤やアルコール消毒では有効性が十分ではありません。石鹸と流水を用いた手洗いが最も重要です。
ノロウイルス感染症は“予防”が大切です。
冬の時期は乾燥しやすい時期ですので、手洗いばかりすると手がカサカサになり、ひび割れたりする場合もあります。1日中家事をしているママの手は大変です。
そこは保湿クリームなどを上手に利用して、ノロウイルスからご自身、そしてご家族を守ってあげてください。
次回は、ノロウイルス感染症にかかった場合の対応について、授乳中のママや赤ちゃんなどパターン別に考えていきたいと思います。
…今回も、最後までお付き合い頂き誠に有難うございました!
【 “今日のすこやかキッズ” のご紹介です】
兵庫県の希望(のぞみ)ちゃん
(2010年12月生まれ)
~ママからのメッセージ~
前歯が3本も抜けて、今だけ見れる笑顔写真です!畑仕事にお料理に、何にでも興味津々♫ いつも小さい子のお世話好きな優しいお姉ちゃんです(*^^*)
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筆者プロフィール:樋屋製薬株式会社 薬剤師/大阪家庭薬協会 品質部会副部会長