(第61回)冬に注意するべきお子さんの病気~風邪とお薬①~

 

 

 

“今日のすくすく赤ちゃん” の紹介は、コラムの最後に登場です

 

 

 

 

これまで、この育児コラムでは、冬に注意するべき子どもの病気として、下記の感染症について考えてきました。

 

〇RSウイルス感染症

〇溶連菌感染症

〇インフルエンザ

〇感染性胃腸炎(ノロウイルス感染症、ロタウイルス感染症)

 

 

 

 

この時期、これ以外にも注意しないといけない病気があります。それは、「風邪(かぜ)」です。

 

 

 

風邪は一年を通して発症します。特に、冬は室内と外との気温差や乾燥により風邪を発症する人が多く、お子さんやご家族が熱を出したり、咳が出始めると「インフルエンザかな?風邪かな?」とママは心配になりますよね。

 

 

 

お医者様の診察でインフルエンザではなく風邪とわかって、ホッとしたのも束の間、今度はお医者様から処方されたお薬が気になるママも多くおられると思います。

 

 

 

そこで、今回は”風邪とそのお薬”ついて考えていきます。

 

 

 

 

 

風邪(かぜ)とは

 

 

上気道(鼻やのど)の急性炎症によって起こる症状のことをいい、一般的には「風邪」、「風邪症候群」、「感冒(かんぼう)」などと呼ばれています。ドラッグストアなどで目にする「感冒薬」とは風邪薬のことです。

 

 

 

 

 

風邪の原因

 

 

風邪は上気道が微生物に感染することで起こります。原因微生物の約90%がライノウイルスやコロナウイルスなどの“ウイルス”です。この風邪ウイルスは少なくとも100種類以上はあるといわれています。

 

 

 

これら風邪ウイルスは同じウイルスでも少しずつ型が違うものがあり、年々変異するため、、一度、感染してそのウイルスに免疫ができたとしても、次々に新しいウイルスに感染します。そのため、風邪は“何度でもひく”のです。

 

 

 

 

ここで、ポイント!!

 

 

風邪をひいてお医者様の診察を受けた際、“風邪薬”としてどんなお薬が処方されていますか?

 

 

熱を下げる解熱薬だったり、のどの痛みを抑える抗炎症薬だったり、体力をつけるビタミン剤だったり・・・その中にいわゆる“抗生物質”が入っている場合があります。

 

 

 

抗生物質とは

 

 

病気の原因となる細菌を殺したり、増殖を抑制したりする働きのある細菌感染症に有効な薬です。一般的には、抗生物質と合成抗菌薬を含めて、”抗菌薬”と呼ばれています。

 

 

 

ここで、ポイント!!

 

 

抗菌薬はウイルスや真菌などの細菌以外が原因の感染症には効果はありません。そのため、RSウイルス感染症やインフルエンザ、ノロウイルス感染症やロタウイルス感染症の治療には抗菌薬は使用されません。

 

 

 

 

ここで、疑問?? 風邪のときになぜ抗菌薬が処方されるの??

 

 

これまで、風邪を引いてお医者様の診察を受けた際、抗菌薬が処方された経験のある方は多いと思います。なぜ、抗菌薬が処方されるのでしょうか?

 

 

 

風邪の症状だけでは、原因となっているものがウイルスなのか細菌なのか厳密に診断は出来ません。検査を実施しないと特定できませんが検査には日数がかかる場合があります。また、感染後初期の場合では検査結果が正確に出ない場合もあります。

 

 

 

そのため、風邪の症状が出ている場合には「細菌による風邪の可能性がわずかにあるから(念のために)」、「肺炎の予防」といった目的で抗菌薬が処方されるのではないかと考えられます。

 

 

 

 

ここで、ポイント!!

 

 

平成29年6月1日、厚生労働省は薬を処方する医師に向けて、「抗微生物薬適性使用の手引き」を公表しました。

 

 

 

この中には、「感冒に対しては、抗菌薬投与を行わないことを推奨する」と記載され、これまで風邪の治療の際に、多くの医師が処方していた抗菌薬の適正使用を喚起しています。

 

 

 

この場合の感冒とは、発熱の有無は問わず、鼻症状(鼻水、鼻づまり)、咽頭症状(咽頭痛)、下気道症状(咳、痰)の3系統の症状が「同時に」、「同程度」存在する病態をいいます。いわゆる、一般的な風邪の症状です。

 

 

 

これは、抗菌薬の使用量が増大するにつれ、その薬剤が効かなくなる微生物が発生するという”薬剤耐性菌”への対策の1つです。

 

 

 

この薬剤耐性菌の問題については、2050年には全世界で年間1,000万人が薬剤耐性菌により死亡することが推定されており、国際社会でも大きな課題となっています。そのために、日本においても抗菌薬を可能な限り適切な場面に限定して、適切に使用することで抗菌薬の使用量を減らし、薬剤耐性菌の低減を目指すものであります。

 

 

 

平成29年9月29日には「抗微生物薬適性使用の手引き 第一版(ダイジェスト版)」が公表され、多くの医療従事者が利用しやすいよう、厚生労働省のホームページからもダウンロードできるようになっています。

 

 

 

このため、これまでは風邪をひいた際に処方されていた抗菌薬が症状によってはもらえない場合もありますが、「お薬(抗菌薬)を処方してくれない=診察をきちんとしてくれない」ではありません。

 

 

 

これまで処方されていた抗菌薬が貰えないことで不安になる方もおられるかもしれませんが、それは適正使用のために、お医者様が診断されたことです。

 

 

 

これからは、お薬を服用する立場の私たち(患者)自身の意識も変えていかないといけないのかもしれません。

 

 

 

ここで、注意!!

 

 

では、薬剤耐性菌を増やさないようにするには、抗菌薬を使用しなければ良い・・・というわけではありません。

 

 

 

病気の中には抗菌薬を使用しないといけないものもあります。

細菌性肺炎、溶連菌感染症、百日咳、大腸菌になどによる膀胱炎などは抗菌薬を使用することで、体内に侵入した細菌を完全に無くすことで重症化、合併症を防ぎ、症状を回復させます。

 

 

 

重要なのは原因となる細菌を「完全に無くす」ことです。

 

 

 

抗菌薬を服用後、症状が回復し、身体が元気になってもお医者様から処方された抗菌薬はまだ残っている・・・そんな場合、抗菌薬を飲み続けることに抵抗を感じられる方は多いと思います。お子さんに対してなら尚更です。

 

 

 

症状がなくなり、すっかり元気になったお子さんの姿を見ていると、それでも抗菌薬を飲ませないといけないの?と悩まれるママも多くおられると思います。

 

 

 

お医者様から処方された抗菌薬は最後まで飲み切らないといけません。

 

 

 

見た目では元気になっていても体内にはまだ原因となる細菌が存在しています。ここで、抗菌薬の服用を止めてしまうと、体内で生き残った細菌により、症状が再発したり、合併症が引き起こされる場合があります。薬剤耐性菌の発生にも繋がります。

 

 

 

どんなにお子さんが元気に見えても、原因となる細菌を「完全に無くす」ために、お医者様から処方された抗菌薬は飲み切るよう、ママがしっかりと管理をしてあげてください。

 

 

 

 

ここで、ポイント!!

 

 

抗菌薬を服用していると、“お腹が緩くなる(軟便)”や“下痢”になる場合があります。

 

 

 

これは、抗菌薬は病気の原因となる細菌だけを攻撃するのではなく、体にとって必要な腸内細菌も攻撃してしまうため、一時的に腸内細菌が少なくなってしまうことで起こります。このような症状が心配なときは、お医者様に相談されるようにしてください。

 

 

 

 

 

風邪の対処法

 

 

対処法として1番大切なのは、水分と栄養を補給し、睡眠を十分にとることです。体内に侵入したウイルスを自分自身の免疫の力で無くしていくためには体力が必要です。風邪をひいた時は無理せず、安静に過ごすことを心掛けてください。

 

 

 

ただ、鼻が詰まって眠れない、のどが痛くて食事が十分にできないといった場合もあります。お子さんの場合はそれによって余計に症状が長引いてしまう場合もあります。お医者様の診察を受けるにも、この時期の病院は診察を待つ人々で混雑している場合が多いため、待ち時間の間に体力を消耗していまいます。

 

 

 

そんな時には、ドラッグストアなどで購入できる風邪薬を使用することも対処法の1つです。

 

 

 

ドラッグストアなどで購入できる市販の風邪薬は鼻水やのどの痛みなどの風邪による諸症状を“緩和”するものです。大人用だけでなく、こども用の風邪薬も多数販売されています。その中には、小さいお子さんが服用しやすいよう、“シロップ”タイプもありますので、お子さんの症状、年齢に応じて、選んであげてください。

 

 

 

 

 

次回も、“風邪とお薬”について考えていきたいと思います。

 

 

今回も、最後までお付き合い頂き誠に有難うございました!

 

 

 

 

 

“今日のすくすく赤ちゃん” のご紹介です】

 

 

兵庫県の陽太くん

(2016年8月生まれ、身長75cm、体重10kg)

 

~ママからのメッセージ~

周りを明るく幸せにしてくれるうちの王子様です!親バカですが・・・。これからも周りの方に支えられ元気にスクスク育ちますように!

 

 

 

 

 

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筆者プロフィール:樋屋製薬株式会社 薬剤師/大阪家庭薬協会 品質部会副部会長