(第65回)お子さんの発熱について①~発熱の原因~
“今日のすこやかキッズ” の紹介は、コラムの最後に登場です♥
今回のキッズは赤ちゃんの頃の写真もご覧頂けます(^^)
現在、インフルエンザが流行しています。
国立感染症研究所が11日に発表した調査によると、2018年第1週(1月1日~7日)の定点当たりの患者報告数は16.31人(患者報告数79,930人)となり、前週(2017年第52週12月25日~12月31日)の定点当たりの患者報告数17.88人よりもやや減少しました。
しかし、第1週は年始の休日3日間を含む週であることに注意し、まだまだインフルエンザには気をつけて過ごしてください。
さて、前回は“インフルエンザの対応”ということで、インフルエンザの症状などについて考えていきました。この時期、お子さんが発熱すると風邪やインフルエンザとついつい決めつけてしまいがちですが、お子さんの発熱の原因は様々です。
そこで、今回はお子さんの発熱の原因となる病気について考えていきます。
発熱とは
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)によると、“発熱”とは体温が37.5℃以上を呈した状態をいい、“高熱”とは体温が38.0℃以上を呈した状態をいいます。
発熱のメカニズム
ウイルス、細菌、真菌などの病原体が体内に侵入すると体の中の免疫系細胞が働き、発熱を起こす発熱物質を放出します。放出された発熱物質は脳の入口に運ばれ、そこでプロスタグランジンE2を産生します。
産生されたプロスタグランジンE2が脳内に入ることで神経伝達物質が遊離され、その神経伝達物質が体温調節中枢である視床下部に伝え、体内に侵入したウイルスなどの増殖至適温度域よりも体温を上昇させます。
第一段階では、体表面(皮膚)の血管が収縮され、体表面からの熱放散が抑制されます。発熱の初期に、一時的に手足が冷たくなったり、顔色が悪くなるのはこのためです。
第二段階では、骨格筋の運動を活性化させ、震えさせることで熱を発生させます。“背中がぞくぞくする”といった、いわゆる“悪寒(おかん)”(発熱によるさむけ)です。体温が上昇する際に、悪寒を感じるのはこのためです。つまり、悪寒を感じている時はまだ発熱の途中ということでもあります。
この第一段階、第二段階を経て、発熱が完了すると悪寒は止まり、体表面の血管は広がります。この時には、顔が赤くなり、“発熱”が外観からでもわかるようになります。
このように、発熱はウイルスなどの病原体の体内での増殖を抑えるための身体反応であり、発熱そのものは病気ではありません。
発熱は熱が出ることよりも、“発熱の原因”と“発熱以外の症状”が重要です。
ここで、ポイント!!
熱が高い=重症ではありません。発熱の高さは重症度には関係ありません。
37.5℃だから軽症、39℃だから重症というわけではありません。また、高熱による脳へのダメージを心配されるママも多くおられますが、高熱で体温が40℃を超えることがあっても、高熱が原因で脳にダメージ(後遺症)が残ることはありません。
脳に後遺症を残す可能性のある疾患は、脳炎、脳症、髄膜炎です。これらの疾患は脳の体温調節中枢の機能が障害されたために高熱となりますが、脳に影響するのは熱そのものではなく、脳の炎症です。
お子さんの発熱時は体温だけを見るのではなく、発熱以外の症状もよくみてあげてください。
お子さんの発熱の原因
発熱の原因の多くはウイルスや細菌などの病原体が体内に侵入することによる感染症です。
インフルエンザ
インフルエンザウイルスの感染により発症する呼吸器感染症です。一般の風邪よりも重症化しやすい疾患です。
症状は、
〇突然の高熱(38℃以上)
〇関節痛、筋肉痛、頭痛、倦怠感などの全身症状
〇咳
〇鼻水
溶連菌感染症
溶血性レンサ球菌と呼ばれる細菌の感染によって発症する感染症です。
症状は、
〇発熱(38~39℃) ※39℃を超える場合もある。
〇のどの痛み
〇白苔に覆われた白い舌(初期の段階)
〇イチゴのようなツブツブが見られる“イチゴ舌”(白い舌が進行)
3歳未満の幼児ではあまり熱があがらないといわれています。
ヘルパンギーナ
主にコクサッキーA群ウイルスに感染することで発症する感染症です。
症状は、
〇突然の高熱(39℃以上、1~3日間)
〇咽頭痛
〇咽頭に赤い発疹、水泡、潰瘍
プール熱(咽頭結膜熱)
“咽頭結膜熱”という、アデノウィルスに感染することで発症する感染症です。夏場にプールの水を介して感染することが多いことから、プール熱と呼ばれています。
幼児から学童の子どもが多く感染します。
症状は、
〇高熱(39℃前後)
〇頭痛、食欲不振
〇咽頭痛、結膜炎(目の充血)
これらの症状が3~5日持続します。
突発性湿疹
主にヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)あるいはヒトヘルペスウイルス7(HHV-7)に感染することで発症する感染症です。0~1歳の乳幼児に多くみられます。
症状は、
〇突然の高熱(39~40℃)
発熱がおさまった後、発疹が出現します。
麻疹(はしか)
麻疹ウイルスに感染することで発症する感染症です。
症状は、
〇発熱(38℃前後、2~4日間)
〇倦怠感
〇咳
〇鼻水
〇目の充血、目やに
発熱がおさまった後、半日くらいのうちに再び高熱(多くは39℃以上)が出るとともに発疹が出現します。
水痘(みずぼうそう)
水痘帯状疱疹ウイルスに感染することで発症する感染症です。
症状は、
〇全身の発疹(紅斑→丘疹→水泡)
〇発熱(出ない場合もある)
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
ムンプスウイルスに感染することで発症する感染症です。
症状は、
〇片側あるいは両側の唾液腺(耳の下)の腫れ
〇発熱
感染症以外では、
川崎病
原因不明の発熱疾患です。全身の血管に炎症が起こります。主に4歳以下の乳幼児に多くみられます。
症状は、
〇発熱(5日以上続く)
〇両目の充血
〇口唇の紅潮、いちご舌
〇全身の発疹(大小さまざまな形状)
〇手足、首リンパ節の腫れ
尚、川崎病で重要なのは早期発見、早期治療です。川崎病は早く治療を始めないと合併症として、心臓の筋肉に酸素や栄養を送っている血管である冠動脈が詰まってしまう“冠動脈瘤”が生じます。
これは、狭心症や心筋梗塞の原因になります。心筋梗塞といえば、生活習慣病のある大人に起こるものだと思われがちですが、川崎病にかかって冠動脈瘤のある子どもは若くして心筋梗塞を起こしてしまう可能性があります。
この他にも、熱中症、脱水などでも発熱は起こります。
発熱は身体には必要な反応
発熱したお子さんを目の前にするとママはとても心配になりますが、発熱は体内に侵入したウイルスなどの病原体の増殖を抑えると共に、免疫系を活性化させます。これらは体が正常に戻ろうとする自然の反応であり、お子さんの感染防御機能、免疫機能を強めるためには必要なことです。
発熱したからといって、むやみに解熱薬を使用することは却って、お子さんの身体機能を弱くすることになる場合もあります。解熱薬は適切に使用しましょう。
そこで、次回は、お子さんの発熱時の解熱薬の使用について考えていきます。
今回も、最後までお付き合い頂き、誠に有難うございました!
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筆者プロフィール:樋屋製薬株式会社 薬剤師/大阪家庭薬協会 品質部会副部会長