(第66回)お子さんの発熱について②~発熱時の解熱薬の使用~

 

 

“今日のすこやかキッズ” の紹介は、コラムの最後に登場です

 

 

 

インフルエンザが流行しています。

 

 

 

国立感染症研究所が18日に発表した調査によると、2018年第2週(1月8日~14日)の定点当たりの患者報告数は26.44人(患者報告数130,682人)となり、前週の定点当たりの患者報告数16.31人よりも増加しました。

 

 

 

全国の保健所地域で警報レベルを超えている保健所地域は187箇所(1都1道2府34県)、注意報レベルを超えている保健所地域は308箇所(全47都道府県)となっています。

 

 

 

特に、例年ならば2~3月頃に増えるインフルエンザB型の感染が昨年末あたりから増え始めています。B型はA型に比べて症状が軽く、インフルエンザの目安である突然の高熱も人によっては微熱程度しかあらわれず、B型に感染していても単なる風邪と勘違いしてしまう場合が多くあります。

 

 

 

周囲へのインフルエンザの感染を防ぐためにも、この時期は、微熱程度でも倦怠感、関節痛などの全身症状がみられた場合は医療機関を受診するようにしてください。

 

 

 

 

さて、今回の育児コラムでは、お子さんの発熱時、解熱薬の使用について考えていきます。

 

 

 

 

解熱薬の働きのメカニズム

 

 

発熱のメカニズムを復習すると、発熱のメカニズムは、ウイルス、細菌、真菌などの病原体の体内への侵入により、体の中の免疫系細胞が働き、発熱を起こす発熱物質を放出します。放出された発熱物質は脳の入口に運ばれ、そこでプロスタグランジンE2を産生します。

 

 

 

産生されたプロスタグランジンE2が脳内に入ることで神経伝達物質が遊離され、その神経伝達物質が体温調節中枢である視床下部に伝え、体内に侵入したウイルスなどの増殖至適温度域よりも体温を上昇させます。

 

 

 

解熱薬はこの「プロスタグランジンE2」の働きを抑えることで体温の上昇を抑えるパターンと、視床下部に働きかけることで、体温の上昇を抑えるパターンとがあります。

 

 

 

ここで、ポイント!!

 

 

解熱薬は痛みを止める鎮痛薬でもあり、一般的には“解熱鎮痛薬”と呼ばれています。

 

 

 

痛みが起こるメカニズムに関係するものは、発熱のメカニズムと同じプロスタグランジンです。プロスタグランジンは痛みを引き起こす原因物質でもあります。

 

 

 

プロスタグランジンの働きを抑えることで発熱と痛みが緩和されることから、解熱鎮痛薬といわれています。

 

 

 

 

解熱鎮痛薬の成分

 

 

解熱鎮痛薬の成分にはいろいろなものがあります。

 

代表的なものは、

 

ジクロフェナクナトリウム

ロキソプロフェンナトリウム

アセチルサリチル酸(アスピリン)

イブプロフェン

アセトアミノフェン    などがあります。

 

 

 

ここで、ポイント!!

 

 

子ども(15歳未満)に使用されている解熱鎮痛薬の成分は基本的には「アセトアミノフェン」だけです。ただし、子どもの症状によりお医者様の判断でそれ以外の成分の解熱鎮痛薬を処方される場合もあります。

 

 

 

これには理由があり、インフルエンザによる発熱の時に「アセチルサリチル酸(アスピリン)」、「メフェナム酸」、「ジクロフェナクナトリウム」、「ロキソプロフェンナトリウム」が配合された解熱鎮痛薬を使用するとインフルエンザ脳症の発生や重症化に関係する可能性があると考えられているためです。

 

 

 

ドラッグストアなどで購入できる市販薬の中で「小児用」となっている解熱鎮痛薬に配合されている成分は全て「アセトアミノフェン」です。しかし、大人用となるとそうではなく、様々な成分が使用され、ロキソプロフェンナトリウム、アスピリンなどを配合した市販薬があります。

 

 

 

決して、ママやパパが使っている解熱鎮痛薬をお子さんに使用しないようにしてください。

 

 

 

 

 

解熱鎮痛薬の使用の目安

 

 

医療機関などでは38.5℃(高熱)を目安に使用するように言われる場合もありますが、基本的には発熱の他にお子さんにあらわれている症状などをみて判断してください。

 

 

 

高熱はあっても、食事、水分はきちんと摂れていて、おしっこもちゃんと出ているようでしたら、解熱鎮痛薬を使用せずに様子をみていても大丈夫でしょう。お子さんの体がウイルスや細菌と十分に戦えるように、安静にしましょう。室温を快適に保ち(暑すぎず、寒すぎず)、汗をかいた下着やパジャマはこまめに着替えるようにし、なるべく水分を多く与えましょう。

 

 

 

解熱鎮痛薬の使用のポイントは、高熱によりぐったりして、食事、水分が摂れない、睡眠がとれないといった症状がお子さんにみられた場合です。

このようなときは、熱を下げてあげることでお子さんも楽になります。

 

 

 

ここで、注意!!

 

 

解熱鎮痛薬は一時的に体温を下げるものです。効果はあくまでも一時的です。だからといって、ずっと使い続ければ良いというものではありません。

 

 

 

解熱鎮痛薬の使用は一時的に症状が楽になっている間に、栄養と水分を摂ったり、睡眠をとったりしてウイルスや細菌と戦う体力を作るためのものだとイメージしてください。

 

 

 

決して、解熱鎮痛薬そのものがウイルスや細菌を倒すわけではありません。

 

 

 

ここで、ポイント!!

 

 

解熱鎮痛薬は発熱が完了した(上がりきった)時に使用しましょう。

 

 

 

発熱には段階があり、第一段階(発熱の初期)では、体表面(皮膚)の血管が収縮され、体表面からの熱放散が抑制されます。この時は一時的に手足が冷たくなったり、顔色が悪くなったりします。

 

 

 

第二段階(発熱の途中)では、骨格筋の運動を活性化させ、震えさせることで熱を発生させます。“背中がぞくぞくする”といった、いわゆる“悪寒(おかん)”(発熱によるさむけ)があらわれます。つまり、悪寒を感じている時はまだ発熱の途中ということです。

 

 

 

この第一段階、第二段階を経て、発熱が完了すると悪寒は止まり、体表面の血管は広がります。この時には、顔が赤くなり、“発熱”が外観からでもわかるようになります。解熱鎮痛薬はこの時に使用しましょう。発熱の初期、途中の段階では、解熱鎮痛薬の効果があまり期待できません。

 

 

 

解熱鎮痛薬を使用したけど熱が下がらなかったといった経験のあるママもおられると思います。もしかすると、発熱の途中で使用されたことが原因かもしれません。

 

 

 

体温は高くても、お子さんの手足が冷たいときは、まだこれから体温が上がる段階ですので、慌てて解熱鎮痛薬を使用しないようにしてください。悪寒を感じているときも同じです。

 

 

 

 

 

医療機関の受診について

 

 

発熱は体内に侵入したウイルスなどの病原体の増殖を抑えると共に、免疫系を活性化させます。これらは体が正常に戻ろうとする自然の反応であり、お子さんの感染防御機能、免疫機能を強めるためには必要なことです。

 

 

 

ただし、発熱が3日以上続くとき、発熱が3日以上続いていなくても発熱によりぐったりして意識がもうろうとしている、水分が摂れずおしっこが少ない、嘔吐を繰り返すなどの症状がある場合は医療機関を受診しましょう。

 

 

 

解熱鎮痛薬の使用により、発熱で疲労しているお子さんの症状は一時的に緩和されますが、解熱鎮痛薬の働きで原因となっている病気が治るわけではありません。ドラッグストアに行けば、解熱鎮痛薬は購入できます。解熱鎮痛薬を使用するのか、医療機関を受診するのか、お子さんの様子をよく観察してママが適切に判断をしてあげてください。

 

 

 

 

 

ドラッグストアではいろいろなお薬が購入できます。最近では、夜遅くまで営業しているドラッグストアもあります。お子さんが病気になると心配のあまりにお薬でなんとかしたいと思われるママもおられると思います。

 

 

 

お薬の使用は適切に、正しく使用しなくてはいけません。

そこで、次回は、お子さんのお薬の使用について考えていきたいと思います。

 

 

今回も、最後までお付き合い頂き、誠に有難うございました!

 

 

 

“今日のすこやかキッズ” のご紹介です】

 

 

愛知県の幸佑くん

(2014年6月生まれ、身長95cm、体重16kg)

 

 

~ママからのメッセージ~

やんちゃボーイですがおままごと大好き!いつもとびきりの笑顔で美味しい料理を運んできてくれます^_^

 

 

 

 

 

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筆者プロフィール:樋屋製薬株式会社 薬剤師/大阪家庭薬協会 品質部会副部会長