(第78回)春に注意するべきお子さんの病気~風疹~
今回は、1970年代の“あの頃のすくすく赤ちゃん”です!
“あの頃のすくすく赤ちゃん” の紹介は、コラムの最後に登場です。
尚、これまでの「すくすく赤ちゃん」、「すこやかキッズ」は引き続き募集中です!
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ゴールデンウィークを間近に控え、ウキウキされている方々も多いのではないでしょうか(^^)
中には旅行に出かけられる方々も多いと思います。
現在、沖縄県で麻疹患者が発生し、沖縄県だけでなく他の地域にも感染拡大が心配されています。
また、日本では感染は減少または発生していない感染症に海外では感染する可能性があります。
旅行される方は旅先での感染症への感染には気を付けてお過ごしください。
今回は前回に引き続き、春に注意するべきお子さんの病気として、風疹について考えていきたいと思います。
風疹とは
風疹ウイルス(Togavirus科Rubivirus属)に感染することで発症する急性の発熱、発疹、リンパ筋腫脹を特徴とする発疹性感染症です。
潜伏期間
約16~18日間(2~3週間)
症状
〇発熱(感染者の約半数にみられる程度)
〇発疹(淡紅色)
〇リンパ筋腫脹(耳介後部、後頭部、頸部など)
また、感染はしても発症しない(=症状がでない)、“不顕性感染”は15(~30)%程度存在するといわれています。
ここで、ポイント!!
麻疹と風疹の違いは、症状にあります。
麻疹は初期の発熱がおさまった後、半日くらいのうちに再び高熱(多くは39℃以上)が出るとともに紅斑(赤い発疹)が出現しますが、風疹は発熱と同時に発疹が出現することがほとんどです。
合併症
基本的には予後良好な疾患ではありますが、高熱が持続したり、血小板減少性紫斑病(3,000人~5,000人に1人)、急性脳炎(4,000人~6,000人に1人)などの合併症により、入院が必要になることがあります。
ここで、注意!!
風疹に伴う最大の問題は“先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CRS)”です。
これは、妊娠20週頃まで(特に、妊娠初期)の女性が風疹にかかると、胎児が風疹ウイルスに感染し、難聴、心疾患、白内障、そして精神や身体の発達の遅れなどの障害を持った赤ちゃんが生まれる可能性があり、これらの障害を先天性風疹症候群といいます。
尚、先天性風疹症候群がおこる可能性は、風疹にかかった妊娠時期により違いがあります。特に妊娠12週までにその可能性が高いことが認められており、発生頻度は25~90%と幅があります。
感染経路
感染者の咳やくしゃみに含まれるウイルスを吸い込むことによる飛沫感染が主な感染経路ですが、ウイルスが付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染もあります。
風疹ウイルスの感染力は強く、免疫のない集団に1人の感染者がいた場合、周囲の何人に感染させるのかを表す基本再生産数は7~9となっています。ちなみに、インフルエンザでは1~2です。
周囲へ感染させる期間は発疹の出現する前後の1週間程度といわれています。
一度感染して発症すると一生免疫が持続するともいわれています。
風疹の治療法
有効な治療薬はなく、対処療法が行われます。
風疹の予防法
風疹は小児の場合、麻疹に比べると通常あまり重くない病気ですが、予防接種が必要です。
風疹の予防接種を行う主な目的の1つは、妊婦が風疹ウイルスに感染することによって生まれてくる赤ちゃんが先天性風疹症候群の障害を持つことのないように、またそのような心配をしながら妊娠を続けることがないように、あらかじめ予防することです。
予防接種は風疹の自然感染による合併症の予防にもなり、大人が感染して重症になることも予防します。
さらに、多くの人が予防接種を受けることにより、個人が風疹から守られるだけでなく、周囲の人に風疹をうつすことが少なくなり、社会全体が風疹から守られることになります。
小児の場合、2006年4月1日以降、定期の予防接種として、麻疹・風疹混合ワクチン(measles-rubella:MRワクチン)の接種が開始となり、2006年6月2日から下図の年齢での2回接種となりました。
「国立感染症研究所 感染症疫学センター http://www.nih.go.jp/niid/ja/from-idsc.html」より
ワクチン接種による免疫獲得率は95%以上と報告されています。
ここで、ポイント!!
予防接種は子どもだけ受ければ良いというものではありません。
日本では1977年8月~1995年3月までは中学生の女子のみが風疹ワクチン定期接種の対象でした。
その後、予防接種法改正などの変遷により、風疹ワクチン定期接種の対象者、接種回数は増えましたが、それでも、1979年(昭和54年)4月2日~1995年(平成7年)4月1日生まれの男女はワクチン接種率が低く、1979年(昭和54年)4月1日以前に生まれた男性はワクチンの定期接種はありません。
【生年月日別ワクチン接種状況】
1962年(昭和37年)4月1日以前生まれの男女
定期接種は行われていませんでしたが、大半の人が自然に風疹に感染したことで免疫があります。
1962年(昭和37年)4月2日~1979年(昭和54年)4月1日以前生まれの男性
中学生の時に女子だけを対象に学校での集団接種が行われていましたが、男性は定期接種制度が行われていなかったため風疹の免疫が少ない人が多い世代です。
1979年(昭和54年)4月2日~1987年(昭和62年)10月1日生まれの男女
男女とも中学生の時に予防接種を受ける対象になっていましたが、個別に医療機関で予防接種を受ける制度であったため、接種率が低く、風疹の免疫がない人が多い世代です。
1987年10月2日~(平成2年)4月1日生まれの男女
男女とも幼児のときに予防接種を受ける対象となり接種率は比較的高いですが、自然に風疹に感染する機会が減少したため、接種を受けていない人には風疹の免疫のない人が比較的多い世代です。
ここで、注意!!
風疹は今では成人に多くみられる病気となっています。特に10代後半~50代前半の男性に多く発病しています。女性は10代後半~30代前半に多く発病しています。
注意1
女性は妊娠前に風疹の予防接種を検討してください。妊娠中には風疹の予防接種を受けることは出来ません。接種回数は子どもの頃を含めて2回です。尚、接種後2ヶ月は妊娠を控えなくてはいけません。
注意2
風疹にかかったことがない成人男性、風疹ワクチンを受けていない成人男性、どちらも不明な成人男性はワクチン接種を検討してください。重複(2回)接種しても問題はありません。
注意3
妊娠中の女性のご家族(医療機関などでの風疹の確実な羅患歴(抗体検査など)がない家族)は予防接種を検討してください。
社会生活ではいろいろな人と接触があります。配偶者、パートナーだけでなく友人、職場の同僚など周囲の人々に風疹をうつす可能性はあります。決して、他人事ではなく、ご自身の体を守るためにも、そして生まれてくる新しい命のためにも注意して過ごしましょう。
ここで、更に注意!!
症状は似ていても、麻疹と風疹は原因となるウイルスが違います。つまり、ワクチンも違います。なので、麻疹だけのワクチン接種では、風疹の予防にはなりません。風疹のワクチンだけでは麻疹の予防にはなりません。
尚、ワクチンの初回接種後の反応として最も多くみられるのは発熱です。接種後1週間前後に最も頻度が高いですが、接種して2週間以内に発熱を認める人が約13%います。その他には、接種後1週間前後に発疹を認める人は数%、アレルギー反応として蕁麻疹を認めた人が約3%、また発熱に伴うけいれんが約0.3%にみられます。
ここで、疑問?? 外出、登校はどうしたら良いの??
学校保健安全法施行規則の中で、風疹は第二種感染症に定められています。
「発疹が消失するまで出席停止。ただし、病状により学校医その他の医師において感染の恐れがないと認めたときは、この限りでない」
風疹は「3日ばしか」と呼ばれるように、麻疹と症状がよく似ていますが、風疹の最大の脅威は妊婦が風疹に感染すると胎児への障害が発生する可能性があるということです。
もちろん、麻疹も妊娠中に感染すると流産や早産のリスクは高まりますので、決して安心できるものではありませんが、胎児への影響は風疹の方が大きく、危険です。
風疹、麻疹にかかったことがあるという記憶も決して正しいとは限りません。
これから妊娠を控えている方で心配な場合は、医療機関で抗体検査を受けて免疫の有無、強さを確認されることも検討されてはいかがでしょうか。
次回は、春に注意するべきお子さんの病気として、“水痘(みずぼうそう)”について考えていきたいと思います。
今回も、最後までお付き合い頂き誠に有難うございました。
【 “あの頃のすくすく赤ちゃん” のご紹介です】
~写真の思い出~
2003年に閉園した西宮市の「甲子園阪神パーク」での写真です。2歳の誕生日に父、母と3人で遊びに行きました。この2か月後に妹が誕生したので、一人っ子としてチヤホヤされた(^^)最後のお出かけです。(写真は1972年撮影)
1970年代の世界での出来事
オイルショック(1973年)
ベトナム戦争終結(1975年)
1970年代の日本での出来事
日本万国博覧会が開催(1970年)
札幌オリンピック開催(1972年)
パンダが上野動物園に来日(1972年)
テレビゲーム「スペースインベーダー」が大ブーム(1978年)
筆者プロフィール:樋屋製薬株式会社 薬剤師/大阪家庭薬協会 品質部会副部会長