(第80回)春に注意するべきお子さんの病気~流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)~
今回は、1990年代の“あの頃のすこやかキッズ”です!
“あの頃のすこやかキッズ” の紹介は、コラムの最後に登場です。
尚、これまでの「すくすく赤ちゃん」、「すこやかキッズ」は引き続き募集中です!
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ゴールデンウィークが終わり、これまでの日常が戻ってきました。
海外などの旅行に行かれた方、近場でレジャーを楽しまれた方、ゴールデンウィークだからこそお仕事が忙しかった方、いろいろなゴールデンウィークを過ごされたと思います。
そして、これからは新生活の疲れやゴールデンウィークの疲れが少しずつ出てくる頃になります。
また、現在、麻疹(はしか)が流行しつつあります。妊婦の方や1歳未満の乳児は特に注意が必要です。麻疹(はしか)については、こちらをご覧ください↓↓↓
皆様、日々の体調管理にはくれぐれもご注意ください。
さて、今回は前回に引き続き、春に注意するべきお子さんの病気として、流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)について考えていきたいと思います。
流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)とは
ムンプスウイルス(Paramyxoviridae科Rubivirus属)に感染することで発症する感染症です。
潜伏期間
約16~18日間(2~3週間)
症状
〇発熱
〇唾液腺の腫脹、痛み(両側あるいは片側の主に耳下腺)
〇嚥下痛
唾液腺の腫脹は通常48時間以内にピークを認めます。
また、感染はしても発症しない(=症状がでない)、“不顕性感染”はかなりみられ、30~35%程度とされています。
合併症
無菌性髄膜炎
1,000人に1人の頻度。後遺症はほとんどなく、予後は良好だといわれています。
回復不能な片耳の難聴(ムンプス難聴)
500~1,000人に1人の頻度。15歳以下の子ども、特に5~9歳頃の子どもに多いといわれています。
流行性耳下腺炎発症後、4~18日の間(場合によっては1~2カ月後)に片方の耳に症状が出ます(ほぼ聞こえなくなる)難治性のため、聴力の回復は難しいとされています。
急性脳炎
3,000~5,000人に1人の頻度。意識障害や痙攣、異常行動などの症状があわられます。
この他にも成人に多くみられるものとして、
睾丸炎
睾丸の腫れ、激痛の症状があらわれます。ほとんどの場合は片方。ただし、両方に睾丸炎を起こした場合は無精子症になる可能性があります。
卵巣炎
下腹部の痛み、高熱の症状があらわれます。
一般的に年齢が高くなるほど合併症の頻度、重症度が高くなるといわれています。
感染経路
感染者の咳やくしゃみに含まれるウイルスを吸い込むことによる飛沫感染が主な感染経路ですが、ウイルスが付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染もあります。
ムンプスウイルスの感染力は強く、免疫のない集団に1人の感染者がいた場合、周囲の何人に感染させるのかを表す基本再生産数は11~14となっています。ちなみに、インフルエンザでは1~2です。
周囲へ感染させる期間は耳下腺の腫脹6日前から腫脹後9日目までの間は唾液中にウイルスの排泄があるため感染源となりえます。
一度感染して発症すると一生免疫が持続するともいわれています。
流行性耳下腺炎の治療方法
有効な治療薬はなく、対処療法が行われます。
流行性耳下腺炎の予防方法
ワクチン接種(任意)が効果的な予防方法です。その有効性については、接種後の羅患調査にて、接種者での羅患は1~3%程度であったとする報告があります。
尚、ワクチンの接種後の反応として、接種部位の痛み、微熱あるいは軽度の耳下腺腫脹がみられる場合があります。
重要な反応としては、無菌性髄膜炎がありますが、約2,000人~3,000人に1人の頻度と自然感染時に比べ低くなっています。
ここで、ポイント!!
感染者と接触した場合の予防策として緊急にワクチン接種を行うのはあまり有効ではありません。感染者との接触当日に緊急ワクチン接種を行っても、症状の軽快は認められても発症を予防することは困難といわれています。
ここで、疑問?? 外出、登校はどうしたら良いの??
学校保健安全法施行規則の中で、流行性耳下腺炎は第二種感染症に定められています。
「耳下腺、顎下腺又は舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで出席停止。ただし、病状により学校医その他の医師において感染の恐れがないと認めたときは、この限りでない」
ここで、注意!! 「おたふくかぜに何度もかかった」
ご自身又は周囲にこんな方はおられませんか?
「おたふくかぜに何度もかかった」
基本的に、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)は一生に1回しか発症しません。では、なぜ何度もおたふくかぜにかかったという人がいるのでしょうか?
それは、流行性耳下腺炎と似た症状の疾患と流行性耳下腺炎とを勘違いされている場合が多いのです。
流行性耳下腺炎と間違いやすい疾患
反復性耳下腺炎
ムンプスウイルス以外のウイルスや細菌でも耳下腺が腫れて痛みを伴う場合があります。
症状は、
〇片方の耳下腺の腫脹(まれに両側の場合もあります)
〇発熱はほとんどない
〇痛みは軽く、2~3日でおさまる
〇数週間から数年おきに繰り返し腫れる
治療法は特になく、思春期の頃までに自然治癒することがほとんどです。
急性化膿性耳下腺炎
細菌が唾液の出る唾液腺導管から耳下腺に入り込むことによって起こる急性の化膿症です。
症状は、
〇片方の耳下腺の腫脹(皮膚は赤くなる)
〇発熱
〇痛み、圧痛
治療法は抗生物質を投与します。
唾石症
異物や細菌などによって唾液の石灰塩が付着してできた石(唾石)が唾液腺導管に詰まり、唾液腺を腫脹させます。ほとんどは顎下腺に発生します。
症状は、
〇片方の顎下腺の腫脹
〇圧痛
治療法は炎症がある場合は抗生物質を投与します。唾石は摘出します。
気になる症状は自分自身の勝手な判断で済ませず、適切に医療機関を受診するようにしてください。
春は生活の変化により体調を崩しやすい季節でもありますので、日々の体調管理が必要です。そして、これから、いよいよ季節は夏に向かっていきます・・・が、その前に、日本の四季ならではの“梅雨”の時期がやってきます。
“梅雨”の季節になると、体調を崩される方も多くおられるのではないでしょうか?
そこで、次回からは、梅雨の時期の過ごし方として、東洋医学の考え方も含めて、日常生活の注意点などについて考えていきたいと思います。
今回も、最後までお付き合い頂き誠に有難うございました。
【 “あの頃のすこやかキッズ” のご紹介です】
~写真の思い出~
プールに遊びに行った写真です。水に濡れるのはいいけど、顔が濡れるとすぐに拭いてもらわないとイヤでした(今は、就活真っ最中の大学4年生です^^)
(写真は1999年撮影)
1990年代の世界での出来事
東西ドイツが統一(1990年)
湾岸戦争が勃発(1991年)
ヨーロッパで欧州連合(EU)が発足(1993年)
香港がイギリスから中華人民共和国に返還される(1997年)
1990年代の日本での出来事
バブル景気が終わる(1991年)
東海道新幹線のぞみ運行開始(1992年)
Jリーグ開幕(1993年)
長野オリンピック開催(1998年)
NHK「おかあさんといっしょ」で唄われた“だんご三兄弟”が大ヒット(1999年)
筆者プロフィール:樋屋製薬株式会社 薬剤師/大阪家庭薬協会 品質部会副部会長