(第85回)食中毒から家族を守りましょう②
“今日のすくすく赤ちゃん” の紹介は、コラムの最後に登場です。
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6月も中旬になり、北海道を除く、日本全土で梅雨入りしました。
湿気でジメジメとした環境が続いています。こんな時に気を付けないといけないのが”食中毒”です。
今回は前回に引き続き、”食中毒の原因”について考えていきます。
(前回からの続き)
原因2.フグ毒や毒きのこなどの自然毒
フグ毒(テトロドトキシン)
フグの内臓、特に肝臓や卵巣に高濃度の毒素が蓄積されている。
日本では食用可能なフグの種類と部位が定められている。
特徴:
耐熱性がある。通常の加熱調理では壊れない。
中毒症状の発症時間:
食後20分~3時間程度
症状:
臨床的に4段階に分けられる。
第1段階:
口唇部および舌端に軽い痺れが現れ、指先に痺れが起こり、歩行はおぼつかなくなる(千鳥足)。頭痛や腹痛を伴うことがある。
第2段階:
不完全運動麻痺が起こり、嘔吐後まもなく運動不能になり、知覚麻痺、言語障害も顕著になる。呼吸困難を感じるようになり、血圧降下が起こる。
第3段階:
全身の完全麻痺が現れ、骨格筋は弛緩し、発声はできるが言葉にならない。血圧が著しく低下し、呼吸困難となる。
第4段階:
意識が消失し、呼吸が停止する。呼吸停止後心臓はしばらく拍動を続けるが、やがて停止し死亡する。
※症状経過の非常に早く、食べてから死亡するまでの致死時間は通常は4~6時間。最も短い事例で1時間30分という致死時間が報告されている。
予防:
・フグ調理師の資格がない人が調理したフグは絶対に食べないようにする。
毒きのこ
間違えやすい毒きのこの例
クサウラベニタケ
間違えやすいキノコ:
ウラベニホテイシメジ、ホンシメジ、ハタケシメジ
症状:
食後20分~1時間程度で嘔吐、下痢、腹痛など消化器系の中毒を起こす。唾液の分泌、瞳孔の収縮、発汗などの中毒症状も現れる。
ツキヨタケ
間違えやすいキノコ:
ヒラタケ、ムキタケ、シイタケ
症状:
食後30分~1時間程度で嘔吐、下痢、腹痛などの中毒を起こす。
ニガクリタケ
間違えやすいキノコ:
ナメコ、クリタケ、ナラタケ、ナラタケモドキ
症状:
食後3時間程度で強い腹痛、激しい嘔吐、下痢、悪寒などの中毒を起こす。重症の場合は、脱水症状、けいれんなどの症状が現れて死亡する場合がある。
カエンタケ
触るだけでも炎症を起こす。食べると死亡する場合もある。
間違えやすいキノコ:
ベニナギナタタケ
症状:
食後30分から、発熱、悪寒、嘔吐、下痢、腹痛、手足のしびれなどの症状を起こす。2日後に、消化器不全、小脳萎縮による運動障害など脳神経障害により死に至ることもある。
ここで、注意!! スギヒラタケは食べないようにしましょう。
古くから食用とされてきましたが、食後、急性脳症のような症状を疑う事例が発生しています。
腎臓に疾患のある人を中心に急性脳症を起こします。原因不明の中枢神経障害で、発症初期には脚の脱力感やふらつき、さらに数日経つと、筋肉の不随意運動が出現します。その後急速に麻痺や全身性の痙攣、意識障害があらわれ、脳浮腫が進行し死亡します。
毒キノコの予防:
・外見で毒キノコを見分けることは困難であり、安易に採って食べたり、人にあげたりしない。
・野生のキノコを食べて体調に異常を感じたら、直ちに病院を受診する。
有毒植物
イヌサフラン
間違えやすい植物:
ギョウジャニンニク(葉)、ギボウシ(葉)、ジャガイモ(球根)、タマネギ(球根)など。
症状:
嘔吐、下痢、皮膚の知覚減退、呼吸困難など。重症の場合は死亡することもある。
トリカブト
間違えやすい植物:
ニリンソウ、モミジガサなど。
症状:
食後10~20分以内で、口唇、舌、手足のしびれ、嘔吐、腹痛、下痢、不整脈、血圧低下、痙攣、呼吸不全に至って死亡することもある。
スイセン及びスノーフレーク(スズランスイセン)
間違えやすい植物:
ニラ、ノビル、タマネギなど。
症状:
食後30分以内で、吐き気、嘔吐、頭痛。スイセンでは、悪心、下痢、発汗、低体温など。
有毒植物の予防:
・外見で有毒植物を見分けることは困難であり、安易に採って食べたり、人にあげたりしない。
・採ってきた山菜などを食べて体調に異常を感じたら、直ちに病院を受診する。
じゃがいもの芽(ソラニン、チャコニン)
ジャガイモの芽(芽とその芽の根元)や皮(特に光が当たって緑色になった部分)に多く含まれている天然毒素。
症状:
吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、頭痛、めまいなど。大量に摂取すると死亡する可能性もある。
予防:
・ジャガイモの芽を完全に取り除く(根元も含めて、皮より内側の部分も多めに除く)
・ジャガイモの皮はむいて食べる。特に、緑色になっているジャガイモは皮を深くむく(皮より内側で緑色になっている部分は全て取り除く)
原因3.サケやサバなどの魚介類、馬刺しなどに生息している寄生虫
アニサキス
寄生虫の一種。体長2~3cmの太い糸状の線虫で、目で見ることができる。
アニサキス幼虫はサバ、サンマ、アジ、イワシ、ヒラメ、サケ、カツオ、イカ等の魚介類の刺身、冷凍処理をしていないシメサバ等に寄生する。
症状:
アニサキス幼虫が寄生している魚介類を生(不十分な冷凍又は加熱のものを含む)で食べることで、 アニサキス幼虫が胃壁や腸壁に刺入して食中毒(アニサキス症)を引き起こす。
急性胃アニサキス症
食後数時間後から十数時間後に、みぞおちの激しい痛み、悪心、嘔吐を生じる。
急性腸アニサキス症
食後十数時間後から数日後に、激しい下腹部痛、腹膜炎症状を生じる。
※患者の多くが急性胃アニサキス症である。
予防:
・魚を購入する際は、新鮮な魚を選ぶ。また、丸ごと1匹で購入した際は、速やかに内臓を取り除く(魚介類の内臓に寄生しているアニサキス幼虫は鮮度が落ちると、内臓から筋肉<身>に移動する)
・内臓を生で食べない。
・調理前には目視で確認し、アニサキス幼虫を取り除く。
・冷凍処理する(-20℃以下、24時間以上で死滅する)
ここで、注意!!
一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても、アニサキス幼虫は死滅しません。激しい腹痛があり、アニサキスによる食中毒が疑われる際は速やかに医療機関を受診しましょう。
近年では、特にシメサバ(自家製など冷凍処理されていないもの)によるアニサキス症が多く報告されています。
ザルコシスティス・フェアリー
馬の筋肉に寄生する寄生虫(原虫)。これが多く含まれた馬肉を食べることで食中毒が起こる。
症状:
食後数時間程度で一過性の嘔吐、下痢など(軽症で終わることが多い)
予防:
・馬肉は-20℃(中心部)、48時間以上冷凍処理する。
※国内で流通する多くの生食用馬肉は、生産地で冷凍処理してから出荷するなどの対策がとられています。
原因4.洗剤や金属などの化学物質
ヒスタミン
ヒスタミンが高濃度に蓄積された食品、特に鮮度が落ちた魚類及びその加工品を食べることにより発症する、アレルギー様の食中毒。
主な原因食品:
マグロ、カジキ、カツオ、サバ、イワシ、サンマ、ブリ、アジなどの赤身魚及びその加工品。
特徴:
ヒスタミンは熱に安定であり、また調理加工工程で除去できないため、一度生成されると食中毒を防ぐことは出来ない。
症状:
食べた直後から1時間以内に、顔面、特に口の周りや耳たぶが赤くなったり、蕁麻疹、頭痛、嘔吐、下痢などがあらわれる。重症の場合は、呼吸困難や意識不明になることがある。ただし、死亡事例はない。
予防:
・鮮度の落ちた赤身魚は食べないようにする。
・食べたときに舌先にピリピリと刺激を感じたら、食べるのを止める。
洗剤や漂白剤
飲料のペットボトルや調味料の空き容器などの食品容器に洗剤等の薬剤を詰め替え、小分けすることで、油や調味料などと間違って使用する。
調味料と洗剤などを同じ棚の中で保管することで、急いでいるときに、容器の形や中身の色だけで調味料と間違えて使用する。
漂白剤やポットの洗浄剤は無色透明のものが多く、見ただけでは漂白剤や洗浄剤が入っていることがわからないため、漂白中であることを忘れたり、洗浄中であることを知らない人が漂白剤や洗浄剤が入った水を飲料水と間違って使用する。
予防:
・洗剤などの薬剤は食品容器に詰め替え、小分けしない。
・洗剤などの薬剤は調味料などと同じ場所(棚)に保管しない。
・食器の漂白やポットの洗浄はシンクの中で行うなど、日常で使用している場所とは別の場所で行う。
・漂白や洗浄中であることを誰もがすぐわかるように大きく表示する。
食中毒の原因は様々です。
次回は食中毒の予防について考えていきたいと思います。
今回も、最後までお付き合い頂き誠に有難うございました!
【 “今日のすくすく赤ちゃん” のご紹介です】
兵庫県の唯月(いつき)ちゃん
(2017年6月生まれ)
~ママからのメッセージ~
待て待て~の途中に振り向いた瞬間をパチリ!全力で楽しんでる姿を見ると心がホッコリ。すくすく大きくなってね!
筆者プロフィール:樋屋製薬株式会社 薬剤師/大阪家庭薬協会 品質部会副部会長