(第7回)夜泣きを通して考える、赤ちゃんとお薬の付き合い方

赤ちゃんが成長していく中で、お乳を飲んでくれない、夜泣きをする等、育児中のママの悩みは尽きません。

 

 

これまで、このコラムでは、赤ちゃんの夜泣きについて、夜泣きの原因や夜泣きの対策等、考えてきました。(「第3回“原因のない夜泣き”にも原因はある?!」,「第4回夜泣きにサヨナラ!原因別、赤ちゃんの夜泣き対策」をご覧ください)

 

 

その中で、度々登場する「夜泣きのお薬」。赤ちゃんの夜泣きで困り果てているママの中には夜泣きのお薬に興味を持たれた方もおられるかもしれません。しかし、「お薬」ということで、ちょっとためらってしまう…そんなママもおられるのではないでしょうか。

 

 

そこで、今回は赤ちゃんの夜泣きを通して、赤ちゃんとお薬の付き合い方について、考えていきたいと思います。

 

 

毎晩の赤ちゃんの夜泣きで困っているママ。 ♪赤ちゃん、夜泣きで困ったな~♪ のCMを機に、夜泣きにお薬があることを初めて知ったというママもたくさんおられると思います。

 

 

”次の定期検診の時に、お医者様に「ひやきおーがん」を出してもらおう”と思われたママ。

実は、 ♪赤ちゃん、夜泣きで困ったな~♪ の「ひやきおーがん」は病院ではもらう事の出来ないお薬なのです。「ひやきおーがん」は薬局、薬店、ドラッグストアで買って頂くお薬です。

 

 

 

 

《ポイント1》 病院でもらうお薬とドラッグストアで買うお薬の違いは?

 

 

それぞれのお薬には、薬機法という法律の中で、正式な名称がついています。

夜泣きのお薬「ひやきおーがん」のように、ドラッグストアで買う事の出来るお薬は「一般用医薬品」、病院でもらうお薬は「医療用医薬品」と呼ばれています。

 

 

 

 

 

《ポイント2》 この2つのお薬は、何がどう違うの?

 

 

「医療用医薬品」はお医者様が診察し、患者様の年齢、体重、症状等を考慮して、使用するお薬を決められます。効果の高い有効成分の含有量が多く、病気への効果は高いのですが、その反面、副作用には注意しないといけません。

 

 

「一般用医薬品」は年齢、体重、症状が様々な人が、自己判断で買うことが出来るお薬なので、安全性を重視し、有効成分の含有量が医療用医薬品に比べると少なくなっているものが多いです。そのため、ドラッグストアで買うお薬は病院へもらうお薬に比べて「効かない」というイメージをもたれている方も多いと思います。

 

 

 

!注意ポイント!

 

一般用医薬品は医療用医薬品に比べて、有効成分の含有量は少ないですが、お薬であることに変わりはありません。「効かない」のではなく「効き目が控えめ」なだけなのです。使用の際は、指示された用法・用量を守ってください。

 

 

特に、病院でもらっているお薬がある場合、一般用医薬品を購入する際には、ドラッグストアの薬剤師又は登録販売者に相談するようにしてください。医療用医薬品で使用されている成分と同じものが、一般用医薬品にも使用されている場合が多くありますので、重複して使用するのを避けるためです。

 

 

 

 

《ポイント3》 2つのお薬はそれぞれの特徴に合わせて、使い分けると便利です。

 

 

早く症状を治したい、重大な疾病と思われる場合は病院で診察を受けて、医療用医薬品を使用することが適しています。初期症状で病院へ行くほどではない場合や、仕事や家事でどうしても病院へ行く時間がないけれど、今の症状を一時的に何とかしたいという場合には、一般用医薬品の使用が便利です。

 

 

 

《ポイント4》 赤ちゃんにお薬を使うときにママが注意しないといけないことは?

 

 

 

お医者様からもらった飲み薬も、ドラッグストアで買った飲み薬も、赤ちゃんが飲まなければ効果は出ません。

 

 

 

赤ちゃんはお乳や離乳食でお腹がいっぱいになると、お薬を飲まない場合があります。赤ちゃんの満腹のタイミングをみて、お薬を飲ませましょう。

 

 

赤ちゃんのお薬は、食前・食後の飲ませるタイミングよりも、飲ませる間隔(1日3回なら4~6時間、1日2回なら8~10時間の間隔)を重視した方が良いでしょう。

 

 

 

 

《ポイント5》 お薬の飲ませ方にもひと工夫!

 

 

大人でもお薬の味や食感が苦手な人がいますので、赤ちゃんなら尚更です。

 

授乳中の赤ちゃんには、ママの乳首に付けたり、哺乳瓶の乳首に付けたりして、お乳を飲む勢いで口に含ませてあげてください。

 

 

離乳食が始まった赤ちゃんには、ペースト状の物(ジャム、バナナ等)と一緒に口に入れてあげると飲みやすいでしょう。

 

 

ただし、どちらも注意しないといけないのは、赤ちゃんが嫌いになると困る物には混ぜたりしないようにしてください。ミルクやおかゆにお薬を混ぜてしまうと、その味を覚えてしまい、ミルクやおかゆを食べなくなってしまう場合があります。

 

 

この方法を用いる場合は、赤ちゃんが嫌いになっても差し支えない物(ゼリー等)に混ぜるようにしてください。

 

 

 

ここで、さらに深く追求! 夜泣きのお薬についてのママの疑問

 

 

 

《ママの疑問1》 夜泣きのお薬はあるの?

 

 

病院でもらうお薬の中には、夜泣きのお薬はありませんが、ドラッグストアで買うことが出来るお薬の中に夜泣きのお薬があります。

夜泣きのお薬は、医薬品の分類としては、「小児五疳薬(しょうにごかんやく)」と呼ばれています。

 

 

 

《ママの疑問2》 夜泣きは病気ではないのに、お薬を飲ませて良いの?

 

 

確かに、夜泣きは病気ではありません。夜泣きは赤ちゃんが成長する過程であらわれる自然現象です。なので、病気ではない夜泣きにお薬があるわけがない…と考えられます。

しかし、夜泣きの原因という点から考えてみるとどうでしょうか。

 

 

赤ちゃんは日々、体の成長だけでなく、心も目まぐるしいスピードで成長しています。しかし、赤ちゃんの中には、赤ちゃん自身がそのスピードに戸惑い、ついていけずに心身のバランスを崩してしまう赤ちゃんもいます。この心身のバランスが崩れることにより、夜泣きや下痢等の肉体的、精神的な症状があらわれます。

 

 

 

例えば、夜泣きのお薬「ひやきおーがん」の効能・効果を見てみると、そこには「小児の神経質、夜なき、かんむし、ひきつけ、かぜひき、かぜの熱、ねびえ(寝冷え)、下痢、消化不良、乳はき(吐乳)、食欲不振、胃腸虚弱」と、様々な症状があります。

 

 

 

これらは全て、赤ちゃんが成長する過程で心身のバランスが崩れることにより起こると考えられています。つまり、心身のバランスが整うことで、夜泣きが治まることから、小児五疳薬は“夜泣きのお薬”と捉えられているのです。

 

 

 

 

《ママの疑問3》 夜泣きは病気じゃないのに、お薬を飲ませるのは嫌!

 

 

夜泣きは病気ではないので、夜泣きしている赤ちゃんにお薬を飲ませることに抵抗のあるママはたくさんおられます。夜泣きは自然現象なのだから、我慢していればいつかは治まると辛抱強く夜泣きに付き合うママもたくさんおられます。

 

 

ママにはいろいろな考えがあります。無理に夜泣きのお薬を飲ませる必要はありません。

 

 

ただ、ママの中には、ママ自身が仕事をしている、頼れる親族が身近にいない等、ママの努力だけでは乗り越えられない環境にいるママもたくさんおられます。

 

日々の生活で疲れているところに、赤ちゃんの夜泣き。夜泣きへのストレスで心身共に疲れ切っているママもおられます。

 

 

夜泣きは病気ではないので、病院へ行っても夜泣きの治療法はありません。

赤ちゃんの夜泣きを何とかしたい、夜泣きをどうにかしたいというママが小児五疳薬である夜泣きのお薬を使用することは、夜泣き対策の選択肢の1つだと考えます。

 

 

 

 

《ママの疑問4》 夜泣きのお薬を飲めば、すぐに効果は出るの?

 

 

夜泣きのお薬である小児五疳薬は、主成分が生薬なので、医療用医薬品のような西洋薬に比べると副作用の心配が少なく、効き目は穏やかです。

効き目が穏やかということは、すぐ効くというものではありません。

 

 

 

夜泣きのお薬を使用して、すぐに夜泣きが治まったという赤ちゃんもいないわけではありませんが、基本的に、夜泣きのお薬は、心身のバランスを整える=赤ちゃんの体質を改善することが目的です。赤ちゃんに無理がないように穏やかに体質を改善していきます。

 

 

夜泣きのお薬を使用される際には、1~2週間は様子を見るつもりで使用して頂くのが良いと思います。

 

 

 

!注意ポイント!

 

 

夜泣きのお薬を使用しているのに、夜泣きがおさまらないと焦らないでください。

 

 

夜泣きの状態は変わらなくても、食欲が出てきた、下痢をしなくなった等、赤ちゃんの様子に変化がみられるのであれば、それは少しずつでも心身のバランスが整いつつあるということです。

 

 

 

 

《ママの疑問5》 夜泣きのお薬を飲んでいれば、夜泣きは治まるの?

 

 

夜泣きのお薬である小児五疳薬は、赤ちゃんの内側から心身のバランスを整えます。しかし、内側から心身のバランスを整えても、外側からの刺激で、心身のバランスはすぐに崩れてしまいます。

 

 

夜泣きのお薬だけではなく、日々の生活環境、生活リズムも整えることで、より効果的に心身のバランスが整うと考えられます。

 

 

 

 

《ママの疑問6》 夜泣きのお薬を使わないという私の選択は間違っているの?

 

 

夜泣きに対して、ママ自身の頑張りで乗り越えるママ。

夜泣きのお薬の力を借りて乗り越えるママ。

どちらのママも赤ちゃんのことを考え、きちんと夜泣きに向き合っているのですから、ママの選択は決して間違ってはいません。

 

 

 

ママの数だけ育児法はあります。ママは自信を持って、赤ちゃんに、そして夜泣きに向き合ってください。

 

 

 

 

次回は、夜泣きと似た症状「疳の虫」について考えていきたいと思います。

 

 

 

…今回も、最後までお付き合い頂き誠に有難うございました!

 

 

【今回の画像は、毎年、11月22日、23日に大阪市中央区にある少彦名(すくなひこな)神社で行われる、無病息災を祈願する、「神農祭(しんのうさい)」で授与される神虎(笹)です。(初穂料2,500円)。

張子の虎は、少彦名神社の「魔除け」「健康祈願」のお守りとして有名です。例年、多くの参拝者がご家族、ご自身の健康のお守りに、この神虎をお求めになっています。

お近くにお住まいのママ、ご興味のあるママがおられましたら、この神農祭で赤ちゃんの健やかな健康、そして赤ちゃんの夜泣きが治まりますように!とお願いしてみるのはいかがでしょうか】

 

 

 

 

筆者プロフィール:樋屋製薬株式会社 薬剤師/大阪家庭薬協会 品質部会副部会長